
福部審査委員長 審査講評
フィルム部門の審査は、非常にシンプルです。
裸のフィルムが、ポンッとそこにあるだけ。
エントリービデオや、プレゼンテーションはありません。
こういう審査では論理より、生理や感情が投票を大きく左右します。
「あ、面白い!」とか、「何これw!?」というものが強い。
そんな中、今年のAカテは大接戦でした。
15秒から、180秒の長尺CMまで、様々な「面白い」と
「何これ」がせめぎ合う展開で、票はけっこう割れました。
最終決戦は、コミケのボディメンテと、ソフの上さま。
秒数もテイストも全く違う2つのCMが競り合い、
何度も議論され、何度も決戦投票しました。
しかし勝負がつかず、結果、
史上稀に見るWグランプリとなりました。
これは結果論ではありますが、CMの幅を感じる
今年一番いい決断だったんじゃないかと思います。
一方、Bカテは終始ぶっちぎり!
「通帳の人」が、ポールトゥウィンという感じでした。
(個人的には、ダブチ食べ美が
もっと評価されて欲しかったけど)
審査全体を通して感じたのは、
Aカテ・Bカテ両方を同じメンバーで審査する方式は、
そろそろアップデートしてもいいかもということです。
Bカテは、審査以前の段階で既にネット上での効果や
広がりが「分かっちゃってる」状態なので、
それを知ってるか否かで投票行動が大きく変わります。
つまり、そこに精通している審査委員比率を高めた方が、
Bカテはより時代感のある審査ができそうだなと思いました。
ただ一方で、AとBを完全にセパレートしちゃうと、
それはそれで蛸壺化しちゃうので、バランスよく
混ぜられる仕組みがあると良いなと思いました。
あと個人的には、特別審査委員として来てくださった
吉田恵里香さんの視座の高さと、
映像表現に潜む偏見や暴力性への指摘が、
目から鱗でした。
「え、そこっ?!」という驚きの連続。
でも言われてみれば確かにその通りで、
なんだか滝に打たれたような衝撃と、
滝行の後の爽快感を、同時に覚える審査会でした。