審査委員講評

  • フィルム部門 審査委員長

    澤本 嘉光 Yoshimitsu Sawamoto
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    クリエーティブ・ボード/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。

    審査方針は「好きなものを好きという」です。流行りの言葉で言えば「忖度をしない」。
    広告という世界に閉じずに、同じ動画コンテンツを作るという視点から映画、テレビ、出演者といったみなさんにも審査委員をお願いし意見をいただきました。結果として、狭い世界内で話していると気がつかないような発見をしながら審査ができました。このように人材交流をはじめとして動画コンテンツを盛り上げるという大きな視点でいろんなジャンルは手を携えて進んでいくべきだと思いますし、内部での交流はもっと活発であるべきだと考えました。

    Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について。

    テレビCMとして流れた、というAカテゴリーと、WEBで主に展開されたというBカテゴリー、Bの方が、秒数にも制約にも自由ですし目にする機会も少ないので楽しめますよ、と審査委員に話していましたが、他ジャンルの方の感想では実はBの方が話題になって拡散していたので目にしたことがあるものは多く、Aのものの完成度と希少性が逆に楽しかったという意見をいただき、目ウロコでした。ということもあり、Aではグランプリは、長編ではなく普段から目にすることの多いCMとしての完成度の高い作品が選ばれています。ゴールドを見ると、ドキュメンタリー風あり、流すタイミングが企画そのもののものもあり、エモーショナルなものもあり、と、現状のCMの見本市となっていると思います。Bは、カテゴリーを「低予算で動画を作れる場所」と定義しがちでそれによりクオリティーは低いけれどバズるために悪目立ちさせる動画が増えて来ているという中、あえてクオリティーと完成度がずば抜けて高いものをグランプリにすることで、Bの方向性自体に一度立ち止まって考えることのきっかけになればと思っています。ブラックサンダーのような低予算で力強いものとの激しい戦いでした。

    Q3 若いクリエイターに一言

    広告の動画は、今、混沌としていてむしろ若手に機会が大きい場所だと思います。ただし、ただの思いつきを精度上げずに作りましたというものが正直多く思われ自己満足の域を超えないものが多かったようにも見えました。せっかくの機会を損失してると思うので、CMの過去作品を学んで真似るも否定するもまず知るということから始めるといいと思います。明確に、コミュニケーションの主流は動画なのですから。

    フィルム部門 審査委員

    秋山 竜次 Ryuji Akiyama
    所属(会社)
    よしもとクリエイティブ・エージェンシー
    役職(肩書き)
    ロバート/お笑い芸人/タレント

    知ってるCMはいっぱいあったんですが、「あ、こういうことなんだ」と、あらためて気づいたモノがあったりとか、ジャンルも相当あるし、CMって、こうやって見てると本当に面白いですね。

    尾形 真理子 Mariko Ogata
    所属(会社)
    博報堂
    役職(肩書き)
    クリエイティブ・ディレクター/コピーライター

    客観に鍛えられた主観。

     企画をしているときも、作っているときも、自分にダメ出しばかりしています。「ここがダメ」、「やっぱりダメ」、「これじゃダメ」。だけど今回の審査では、「好き」とか「すごい」とか「素晴らしい」とか、素直な言葉が頻出しました。「いいものはいい」と言い切るのは、ダメ出し以上にタフな審美眼が求められると学びました。
    たのしい審査会。

     いいコマーシャルがたくさんある。客観に鍛えられたプロフェッショナルの主観が飛び交う場がある。それはとてもたのしい仕事だと思いました。広告の限界とか、暗い未来とか、勝手に悲観している場合じゃない。「俺もやらないと…」、「わたし、がんばろう…」。そんな声がボソボソ聞こえて終わる審査会はたのしかったです。

    川村 元気 Genki Kawamura
    所属(会社)
    東宝
    役職(肩書き)
    映画プロデューサー/小説家/絵本作家

    普段からCMを見るのが好きな視聴者として、最近たまにCMを作るようになった作り手として、とても新鮮な気持ちで拝見しました。「GRAVITY CAT」「TOKYO CULTURE STORY」「サウンドロゴしりとり」など長めの尺のなかに素晴らしいものがたくさんありました。一方、尺が自由になっていくなかで、CMの凄みを感じたのは15秒や30秒、60秒のなかで何を表現するかということだった気もします。映画や小説には尺の規定はないのですが、CMという表現の世界は規定があるからこその、短歌や俳句のようなユニークな表現がまだまだ生まれてくるのではという予感がしました。

    佐久間 宣行 Nobuyuki Sakuma
    所属(会社)
    テレビ東京
    役職(肩書き)
    プロデューサー

    異分野からの参加ということで、オファーを頂いてからずっと楽しみにしてました。
    全国から集ったCM、Web動画のクオリティは本当に高くて、2日間の審査会があっという間に終わった感じです。中でも、画面構成やテロップワークが完全にスマホシフトしているWeb動画が増えてきたのが印象的でしたし勉強になりました。
    僕はテレビ東京という小さなテレビ局に所属していることもあって、規模感のあるものよりもアイディアに独自性があるものに惹かれてしまうのですが、審査会の皆さんとの意見交換を通して「真ん中」の表現の素晴らしさを再確認できたのが個人的には大きかったです。でも、テレ東視点だからすくい上げられた作品もあったと思いますけどね(笑)
    審査会は驚くほど風通しがよく、選ばれた作品も(個人的な推しとは違うものも勿論ありましたが)完全に納得できました。貴重な体験させていただき感謝しています。あと、ロバート秋山がいつかこの審査委員の面々の誰かをクリエイターズ・ファイルで完コピするんじゃないかと楽しみにしています。佐々木宏さんとか。

    佐々木 宏 Hiroshi Sasaki
    所属(会社)
    シンガタ
    役職(肩書き)
    クリエイティブ・ディレクター

    今回、なんといっても、この審査委員メンバーを選んだ澤本委員長に驚きました。
    いままでにない人選、テレビ界、芸能界、映画界、など多方面からのセレクトで、いったいどうなるのかと。広告界からもフレッシュな面々。敢えて言うと、私だけが、ひとりまだ居座ってる爺ちゃん感満載で、、、、左にロバートさん、目の前に吉岡里帆さんです。右にテレ東のプリンス佐久間さん。そして、澤本君がいつになく機嫌良く、生き生きと委員長をやっているのも新鮮。で、この結果です。非常にいい雰囲気でしたね。まじめだったし。ひとりひとりの発言になるほどと頷くこと多し。好みで言うと、Aは、LINEの音楽、パヤのコンコルド、東海テレビになります。Bは、ソニーのネコと、ブラックサンダーですが、どうでもよいですね。後味の良い、有意義な審査会でした。

    佐藤 カズー Kazoo Sato
    所属(会社)
    TBWAHAKUHODO
    役職(肩書き)
    CCO/Creative Director

    今の生活者が語りたくなる偉大なストーリーを描くこと。映像の力を使って、広告という浪費を宝物に変えること。そんな当たり前のことを高次元で形にできている仕事は強いなと思いました。そしてその仕事の良し悪しを業界目線だけでなく、世の中目線でジャッジできた今回の審査会は非常に素晴らしかったなと、あらためて。澤本さんのCMにおけるキャスティング感覚って、こういう場にも応用できるのか。勉強になります。

    佐藤 雄介 Yusuke Sato
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    CMプランナー/コピーライター

    別に広告賞で評価されなくても、世の中とかネットで話題になればいいさ、そんな時代さ。とか嘯いてた僕ですが、ごめんなさい。この人たちに「好き」って言われたい、というか言わせたい。そんな審査委員の方々との審査は刺激的で、どこに出しても恥ずかしくない結果になったかと思います。いや、CMは恥ずかしがってる場合じゃないか。CMの競合は、とっくにCMじゃなくて、ゴッドタンとか、逃げ恥とか、サマーウォーズとか、君の名は。とか。世の中を動かす動画といいますか。スキップされない動画といいますか。あっちに全く競合として意識されてなくても、こっちはそういう気概でいかないと。CMはどんどん、ちょっと古いものになってしまう。もっと貪欲に。恥ずかしがってる場合じゃないよな。なんて。これ、ただの自戒です。

    篠原 誠 Makoto Shinohara
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    クリエーティブ・ディレクター

    審査する側にたつことがなかった自分が、審査する側にたって思ったことは、
    意外と人と自分とは好きなものが違うということ。
    ACCの未来のことを考えるなら好きなものよりも、今年、選ばれるべきものとして選ぶべきなのかもしれないけれど、いざ、目の前に出された映像をみると、やはり自分の価値観だよりに選んでしまいました。
    つまり企画が強いかどうか。企みが強いかどうかです。
    企みが見えてしまうのはかっこわるいですが、見えないように企むのは、とてもかっこよくて。
    いろいろな環境が変わっても、企みはできるのだなと、自戒を込めて。

    多田 琢 Taku Tada
    所属(会社)
    TUGBOAT
    役職(肩書き)
    クリエイティブディレクター / CMプランナー

    「あの人は、そういうところを評価するんだ」という発見が、審査会の楽しみのひとつ。なので最終審査に参加できなかったことは非常に悔まれます。
    僕は野狐禅というバンドの時代から竹原ピストルの大ファンであります。以前たまたまラジオで、吉岡さんが竹原ピストルの歌が好きだ、と言っているのを聞きました。(女性で竹原ピストルを好きだなんていう人は誰もいなかった)その頃から、吉岡さんという女優は一体どんな方なんだろ?と気になっていました。
    その吉岡さんは、審査では何推しだったんだろう?それも知りたかったし、「竹原ピストルの世界」について語り合えなかったのが残念でなりません。

    田中 里沙 Risa Tanaka
    所属(会社)
    宣伝会議
    役職(肩書き)
    取締役メディア情報統括

    以前から気になっていたのですが、業界の人はCMに厳しく当たりすぎだと思うのです。大抵の人はCMを気軽に見て面白がりますし、有益な情報源として結構活用しています。そんな中で、広告に愛情をもって審査をしよう!という澤本審査委員長の呼びかけ通り、「私はこれが好き」、「このフィルムのここがすごい」と素直に意見し、議論のできた審査会はとても楽しい時間でした。作品への挑戦、制作の意図、狙い、工夫などに最大限の想像力を働かせ、種々様々な作品を選出できたことが嬉しいですし、審査を通して魅力的な撮影、照明、編集、音楽を生み出したクラフトマンシップの方々にも出会えました。フィルムの力は偉大です。

    那須田 淳 Atsushi Nasuda
    所属(会社)
    TBSテレビ
    役職(肩書き)
    プロデューサー/事業局 映画・アニメ事業部 部長

    「きよらグルメ仕立て」のお弁当に卵のお布団を掛けてあげるあのえも言われぬ可愛さ、「さけるグミ・店長と彼女篇」の女優さんの何とも言えない表情、「GRAVITY DAZE2」の計算されたこだわりのディテールで展開に引っ張っぱられ、思いもよらない体験に連れだされる幸福感、「東京ガス・家族の絆 やめてよ」の言葉の綾だけで紡がれる物語……、映像のエンタテイメント性って、やっぱり言葉にできない感覚を呼び起こしてくれる創意工夫から生まれてくるんだと、まだまだ創意工夫はたくさんあるんだと楽しく勇気をもらえた審査会でした。作り手の皆様に感謝です。楽しさって最高のエンタメ感ですし、そこへの工夫にぴったりの創意のある作品を選びました。

    福部 明浩 Akihiro Fukube
    所属(会社)
    catch
    役職(肩書き)
    クリエイティブディレクター/コピーライター

    短く、かつエモーショナルに伝える。
    僕らにとっては前提条件とも言える、この作業は他業界の人たちから見ると、かなり特殊なものらしく広告以外の審査委員の方々は、とくにその部分を、評価してくれていた気がしました。
    逆にBカテゴリーの長いのには、手厳しい(笑)分かる気がします。
    そこは彼らの日常であり戦場ですから。「映画っぽい」とか「バラエティーっぽい」では評価するはずもありません。たぶん広告は、広告ならではの「他にない能力」を鍛えた方が、他業界から頼りにされる存在になれるんだろうなと、思ったACC初審査でした。

    藤井 亮 Ryo Fujii
    所属(会社)
    電通関西
    役職(肩書き)
    CMプランナー・ディレクター

    審査会がはじまる前、ACCの審査って、どうせ有名クリエイターとか有名企業が作ったやつが忖度されるんでしょ…などと嫉妬フィルター全開でかまえていてすいませんでした。
    せめて末席の僕が何か波乱を起こさねば!と思っていましたが、そんなことをする必要もなく、みなさんめっちゃ公平に風通し良く、そして真面目に審査に向き合っておられました。またここに応募できるものをちゃんと作らなければ。そう思う審査会でした。
    でも…地域審査は…地元の名士おじさん(CM興味ゼロ)の寄り合い感は否めないのでちゃんと制作者や若い人を多く呼ぶべきだと思います(せめてもの波乱起こし)。

    別所 哲也 Tetsuya Bessho
    所属(会社)
    パシフィックボイス/ショートショート実行委員会
    役職(肩書き)
    俳優/「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」代表

    人間はモノガタル動物だ!音楽でも文学でもない“シネマ”の世界をショートフィルムから、観続けてきた。国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバルを & アジア」を主宰して、2018年で20周年! 広告でも映画でもない動画マーケティングの手法として、企業がネット上に発信し始めた「ブランデッドショート」。この動画コンテンツ群が、「共感」や「感動」を今までの作法とは、違う形で僕たちの感性を呼び覚ます。そして僕たちの生きがいや、ライフスタイルを決める消費行動と結びついていく時代。シネマの視点、ネットコンテンツの視点で今回の審査作品を感じる時間は、俳優・表現者としても、短編映画祭の主催者としても多くの気づき!があった。感覚が動く「リズム」というのが編集にも、カメラワークにもテクニカル的にあるように思った。本当に貴重な体験をさせていただいた。これからも、21世紀型「ウゴク絵」の宇宙を感じたり、表現したり、分かち合っていきたいと思う。

    細田 守 Mamoru Hosoda
    所属(会社)
    スタジオ地図
    役職(肩書き)
    映画監督

    まるで良質な長編映画を凝縮したような味わいもあり、どんなお笑いよりも彼方へ行っちゃってるおかしみもあり、どんなドキュメンタリーよりもある真実の一側面に迫っていると感じる切り口もあり、映し出される個々の一つ一つに、驚くことばかりの審査会でした。そのなかでも特に唸ったのは、映画やお笑いや報道といった他の分野でも置換可能なものでなく、広告でしか伝えられない、広告という枠がなかったら成り立たなかったかもしれない表現を真正面からドンと突きつけてくる作品でした。そのような素晴らしい表現にまた出会いたいです。それを生み出す人の考え方を知りたいです。

    吉岡 里帆 Riho Yoshioka
    所属(会社)
    エー・チーム
    役職(肩書き)
    女優

    常にアンテナを張り巡らし、今最も必要とされる画を秒単位の時間の中で緻密に表現する。
    そんなクリエイターの方々と共に作品を吟味し、意見を交わすことは私にとって大学時代の講義室の様でとてもワクワクしました。
    どこを見、どこに感動するかは人それぞれです。
    ですが、心を射抜く作品というのはどの人の目もキラキラと高揚させます。
    昨日の新しいが次の日にはもう古いとされるこの時代、消費や消耗の中生きる世代から見る素敵な広告とは何だろう?という視点で協議に挑みました。
    見えた一つの答えは商品を広告する、「プラスアルファ」があるかどうか。
    その映像を見た1秒後に価値観や生き方、喜びの感度が変わるかどうか。
    ACC審査会ではそんなプラスアルファを与えてくれる素敵な作品をいくつも拝見しました。
    私も作り手の一員として、心動く1秒を作ることのできる様な表現者でありたいと強く刺激を受けました。感謝です。
    広告って面白い。

  • ラジオCM部門 審査委員長

    嶋 浩一郎 Koichiro Shima
    所属(会社)
    博報堂ケトル
    役職(肩書き)
    代表取締役社長
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください

    とにかく楽しい審査で示唆に富んでいました。審査の時一番に考えたことがラジオを聴いている人にリアルに響く広告かどうか。そういうわけで、審査には我々広告制作者だけでなく、ラジオ放送やリスナーの気持ちに精通している番組の制作者やパーソナリティを務める方にも参加いただきました。実際にラジオでしゃべられている方は、絶えずリスナーの反応を計算しながらトークをしているわけで、掛け合いにおける間のつくり方、音の作り込みなどに対するリスナーの反応などリアリティのある指摘があり刺激的でした。また、radikoやスマートスピーカーの登場でラジオを聴く人達やシチュエーションも変わっていくのではなどラジオ放送の未来についても議論が活発に行われました。

    Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について。

    グランプリは大日本除虫菊の〈金鳥少年2017〉を選出しました。このシリーズは昨年の受賞作でもあるのですが、複数年にわたりラジオリスナーの心を捉えるストーリーを紡ぎだした点も評価されました。ラジオは人々の日々の生活に寄り添うメディアで、反復して聴かれるメディアです。そういうメディアの中でCMだって一つのコンテンツとして楽しんでもらっていいはずです。大沢くんと高山さんの二人の絶妙な掛け合いや、計算され尽くされたコピーも高く評価されました。

    Q3 若いクリエイターに一言

    今年、アンダー29の出品本数が増加しました。若いクリエイターがラジオCM制作に積極的に関わってくれているのが素直に嬉しいです。ラジオは本音のメディアですよね。若手の感覚で生活者の本音を捉えた作品が多くみられ大変興味深かったです。

    ラジオCM部門 審査委員

    秋吉 健太 Kenta Akiyoshi
    所属(会社)
    ヤフー
    役職(肩書き)
    Yahoo!ライフマガジン 編集長

    私は1995年にACCラジオCM部門で秀作賞を受賞したことがあるのですが、丸2日間かけて“脳が痺れるほど”真剣にラジオCMを聴いたのは久しぶりでした。今回ご一緒させていただいたラジオを愛する審査委員のみなさんと、応募作品の斬新な設定やオリジナリティ溢れる世界観はもちろん、作品の中に散りばめられた一つ一つの言葉についても丁寧に審査させていただきました。15秒という短い時間の中で最大限の工夫を凝らしている作品からはそのアイデアに思わず唸ることが多かったです。今年はスマートスピーカーの登場でラジオなどの音声コンテンツが再注目されていますが、今回の審査に携われたことで改めてラジオCMの可能性を感じました。

    小宮山 雄飛 Yuhi Komiyama
    所属(会社)
    GENIUS AT WORK
    役職(肩書き)
    代表取締役/ホフディラン/渋谷区観光大使・クリエイティブアンバサダー

    20年前にホフディランとして初めてのラジオレギュラー「ホフディランのオールナイトニッポン」をやらせてもらって以来、J-WAVEにTOKYO FMに、思えばミュージシャンながら常にラジオに関わってきた20年。そんな僕がラジオCMの審査委員をさせてもらう日が来るとは思ってませんでしたが、審査会は想像以上に楽しい現場でした。その理由は、審査委員全員がラジオを心から愛しているから。愛を持っているからラジオで「喋る」でもラジオを「聴く」でもなく、ラジオCMを「選ぶ」という行為すら楽しかったのだと思います。(偉そうな言い方ですいませんが)広告のプロが選ぶ広告ではなく、ラジオを愛する人が選ぶラジオ広告というのが、すごくピュアで良いと思いました。

    澤本 嘉光 Yoshimitsu Sawamoto
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    クリエーティブ・ボード/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    ACCのラジオの審査会はとにかく楽しい。何より審査委員の人選がとてもいい辛さをもたらしていると思います。嶋審査委員長の一番大きな仕事です。ラジオというこの先再度脚光を浴びそうなメディアについてどのような未来が待っているのか、どう持っていけるのか、という議論までが、この審査委員の中に入ると自然と出てきました。その議論もしながらの、2017年としてのラジオCMを評価していきました。現実と未来を同時に垣間見れる審査でした。
    数年後に見返すと、おそらく、この数年がラジオの大きな転換点になっていると想像できる年に、ラジオの様々な面を代表する入賞作を選べたことは今の博物館的な役割としてもとても良かったと思います。

    東畑 幸多 Kota Tohata
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    グループクリエーティブ・ディレクター/CMプランナー

    amazonやGoogleをはじめ、今世界は、スマートスピーカーの覇権争いに明け暮れている。
    これからは「水買っといて!」とか「あの番組予約して」とか、家での入力は、スマホすら触らず、音声入力が主流になるらしい。
    そんな話を、審査の間の雑談で、聞いたりしました。なるほど!
    ラジオCMを「音声コンテンツ」と捉えると、とてつもなく新しい可能性を持ったコミュニケーションの場になるかも。ラジオCMの技術を磨きながらも、オールドメディアに新たなアイデア、刺激的なリレーションを掛け合わせるだけで、ラジオCMは最高のブルーオーシャンに変身する。そんなことを真剣に妄想してしまった審査会でした。若手の皆さん、チャンス到来です!ホントに。

    西田 善太 Zenta Nishida
    所属(会社)
    マガジンハウス
    役職(肩書き)
    BRUTUS編集長

    古今和歌集の仮名序にある一節、「力をも入れずして天地を動かし 目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ」る作品を探しました。言葉と音しかないラジオCMこそ、十数世紀も昔からつづく特別な言葉、和歌みたいなもの、とは言い過ぎでしょうか。五七五七七のように、15秒、20秒…の決まりに込められたチカラ。CM審査会で数百本の作品を皆で一心に聴き込んでいる様子は、まるで歌合せのようだな、と思ったのです。審査会とは点数をつけて順位をつける集まりではなく、「楽しみ」をつくる場所だと思います。あたらしい価値、チカラを見つけるところです。多士済々の鬼神たちが集まった審査会をどよめかせたラジオCM、何度も詠んでみてください。

    橋本 吉史 Yoshifumi Hashimoto
    所属(会社)
    TBSラジオ
    役職(肩書き)
    編成局プロデューサー

    音だけの表現にこだわり抜いて作られたコンテンツを一気に数百本聴いていく審査会は、ラジオの作り手にとって贅沢すぎる時間。「なるほど、こんなやり方があったか!」と刺激と発見の連続。ラジオ界には演出手法の発明が他業界に比べて少ないんじゃないかと勝手に思っていた時期があったけど、なんだ、常に進化してるじゃねーか!と自信を持てた会でもあった。映像がないこと、すなわち人の想像力の世界に入っていくことの無限の可能性がラジオの可能性でもある。受賞作は毎年ちゃんとPRしたほうがいいのでTBSラジオで特番枠を作ります。

    秀島 史香 Fumika Hideshima
    所属(会社)
    FM BIRD
    役職(肩書き)
    ラジオDJ、ナレーター

    「ハッとする音が耳に飛び込んでくると、思わず動きが止まり、スピーカーの方を見てしまう」。そんな「ラジオあるある」が何度も起きた審査の現場でした。「見えないからこそラジオは自由。聞く人の想像力を広げることができる」と口で言うのは簡単ですが、その可能性と楽しさを表現することの難しさよ!「この作品のどんなところが良いのか」と言語化する審査自体、身の引き締まるような刺激的な体験でした。結果選ばれたのは、DJとしても生放送のCM明け直後、「え、えっと…」といい意味で動揺してしまいそうな、そんな名作ばかりです。一瞬で心をつかみ、何年経っても残り続ける受賞作品たちに、惜しみない拍手を!

    福本 ゆみ Yumi Fukumoto
    所属(会社)
    福本ゆみ事務所
    役職(肩書き)
    コピーライター/クリエーティブディレクター/俳人

    去年グランプリを受賞していることが、どちらかといえば不利に働く状況の中、今年もまた「金鳥少年」の魅力に抗うことはできなかった。ライバルらしき人物の登場や、ちょっと大人になった大沢君の芝居の変化などあって、全く飽きさせない。ラジオCMというよりは、愛されるコンテンツになったと思う。企画・演出・キャスティングが、お手本になるのはもちろんだが、こういう企画を長く続けて行くクライアントの姿勢もお手本になる。ゆっくりとファンを作って行く、そういう企画がもっとあってもいいと思う。その他の上位作品には、良質なインタビューものが多かった。これはここ数年の傾向かもしれない。そんな長尺CMの中で、メガネの愛眼は、20秒でありながら負けないインパクトがあって、印象に残った。

    細田 高広 Takahiro Hosoda
    所属(会社)
    TBWAHAKUHODO
    役職(肩書き)
    シニアクリエイティブディレクター

    情報量で競ったら、ラジオCMはテレビやデジタルの広告に勝てません。でも、伝える「情緒量」ではラジオは負けない。見せられないことが強みになる。今回もラジオらしい情緒伝達をもたらす60秒の青春ドラマがあり、60秒のドキュメンタリーがあり、20秒の現代詩がありました。TVCMの制作能力は「動画」の時代になって活動の場を広げています。ラジオは、そしてラジオCMはどうでしょう。誰もがスマホという名のラジオ受信機を持ち歩き、家庭にはスマートスピーカーが普及するかもしれない今。動画のように「音声」も、コンテンツとして盛り上がるかもしれない。なんて、楽観的過ぎるでしょうか。

    三井 明子 Akiko Mitsui
    所属(会社)
    アサツー ディ・ケイ
    役職(肩書き)
    コピーライター/クリエイティブディレクター

    大学のサークルの集まりなのでは?と思ってしまうような和気あいあいとした審査でした。(私は学生時代、サークルには入っていませんでしたが…。)嶋審査委員長の温かいお気づかいのもと、和やかに進んでいく審査は、とてもリラックスして楽しめました。結果を見ると、ずばり、関西優位、女性優位。ずらりと並んだ上位受賞作の制作者には、関西のかた、そして女性のかたが目立ちます。ラジオという、よりパーソナルに届けるメディアの特性と、何かカンケイがあるのでしょうか…。審査委員のみなさんとの刺激的な議論を重ねて「今年にふさわしい」受賞作を選出できたのではないかと感じています。受賞者のみなさま、おめでとうございます!

    吉田 尚記 Hisanori Yoshida
    所属(会社)
    ニッポン放送
    役職(肩書き)
    ビジネス開発センター ネクストビジネス戦略部副部長

    最近、人工知能の研究が進んで、自動翻訳のレベルが格段に上がったそうです。その原理は、例えば日本語で「机が空を飛ぶ」という言葉が発せられたら、言葉を逐語翻訳するのではなく、まずはその「机が空を飛ぶ」というありえない画像を作り、今度はその画像を翻訳先の言葉で実況すると、翻訳精度が著しく上がるのだとか。我々は、言葉を額面通りに受け取っているのではなく、言葉が内包するイメージをこそ受け取っているんだな、と感じさせられます。今回審査させて頂いたラジオCMの数十秒に込められたイメージの豊かさ…!毎日、生放送していても、こんな多彩に人の心をつかめる音声表現があったとは。最高の勉強をさせていただきました!

  • マーケティング・エフェクティブネス部門
    審査委員長

    矢野 絹子 Masako Yano
    所属(会社)
    KDDI
    役職(肩書き)
    コミュニケーション本部
    宣伝部 部長
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。

    今年もクリエイター・マーケッター・企業の宣伝担当者が集まり、「これは効いた!」を徹底的に議論しました。評価ポイントは、「マーケティング戦略」と「クリエイティビティ」の掛け合わせでいかに「成果」を出したか。課題も多様化し、何度も投票を繰り返すほど難しい審査となりましたが、それぞれのプロの視点、担当者の目線から、多角的な意見を出し合い、今年を象徴する「一番効いた!」を選び出せたと思います。

    Q2 作品の傾向およびグランプリ作品について。

    一次審査を終えた審査委員から出た言葉が「作品のクオリティが一段上がった」。エントリーシートから気合いがにじみ出ていました。
    今年のキーワードは「社会的課題解決」と「圧倒的リザルト」。グランプリを受賞した作品は、ワーク・ライフ・バランスという国家的課題に対し「広告」という手法を使い、広く影響を与えたことが高く評価されました。シンプルな映像だからこそ伝わるメッセージに、改めて「戦略×クリエイティブ」の力を感じました。

    Q3 若いクリエイターに一言

    ME賞の範疇は年々拡張し、柔軟性を増しています。新しい視点で課題に切り込むチャレンジ精神をいかんなく発揮できる場です。「斬新な戦略」「新鮮なクリエイティブ」から生み出される「新時代の成果」を期待しています。

    マーケティング・エフェクティブネス部門
    審査委員

    上野 隆信 Takanobu Ueno
    所属(会社)
    大塚製薬
    役職(肩書き)
    ニュートラシューティカルズ事業部 宣伝部 課長

    ME部門におけるリザルトをどうみるか?
    初のACC審査でしたが、どれもが驚くような結果・効果が報告されていました。しかし課題としている事によって数字だけでは測れないことが多いのも確か。そこで審査委員の熱のこもった議論が交わされます。SNSの普及により話題にはなるが、すぐに忘れ去られます。私は“見て触れて心を動かすだけでなく、如何に行動に移させる事が出来るか”が評価軸。今年は、社会的問題の解決とリブランドに目立つものが残っていました。クリエイティブや参加しやすい手法によって拡散され、自分ゴト化され、数字だけでは測れない解決が報告されていました。受賞作品は、納得の選出です。受賞された皆様、本当におめでとうございます。

    幼方 聡子 Satoko Ubukata
    所属(会社)
    東レ
    役職(肩書き)
    宣伝室長

    今年も2ヶ月におよぶ厳正かつ楽しい審査が終わりました。今年は例年にも増して、社会的課題の解決に向けたキャンペーンが多かった印象があります。ワ-クライフバランス、女性活躍、少子化、都市ガスの自由化など、これらのテーマについて深刻でなく上手く問題提起する、キラリと光るアプローチが心に残りました。特に、グランプリの「知事が妊婦に。」は、当初からSNSなどで話題になっており、個人的にも動向を見守っていたキャンペーンでした。効果は計りづらいけど、確実に社会に一石を投じたと思います。ME部門にリザルトは不可欠ですが、こんなグランプリもありですね。来年も素晴らしい作品が数多く集まりますよう。

    大越 いづみ Izumi Okoshi
    所属(会社)
    電通 ビジネス・クリエーション・センター
    役職(肩書き)
    エグゼクティブ・ビジネス・クリエーション・ディレクター

    アワードの価値は、「今年らしさ」を記録できることです。昨年は地方創生ブーム。今年は社会課題解決型の増加と、その質の向上。デリケートなテーマに取り組み、対象者へのやさしい眼差しと配慮が行き届いた作品が揃いました。悩みどころは、またしても「リザルト」です。社会課題解決型の多くは、「課題の存在」の意識化から始めなければなりません。長すぎる道のりの「一歩」をソーシャルインパクトとして評価する指標や測定方法においても、知見を高め合ていくことが必要だと感じました。
    ME部門の特徴は、課題とその解決策の幅です。MEに該当する素晴らしい仕事が日本中にもっとあるはず。だから、17年はMEのエントリー数倍増を目標にしたい!と昨年の審査委員コメントで呼びかけましたが、残念ながらそれは実現できませんでした。18年こそ。

    大高 香世 Kayo Otaka
    所属(会社)
    VoiceVision
    役職(肩書き)
    代表取締役社長

    HopeとWill。
    世の中こんな風になったらいいのにな、こんなことが実現できたらいいのにな、そんな“希望”を“意志”に替えて実現させたアイディアが今年はたくさん受賞をしました。毎年エフェクティブネス=効果が最大の論点となるME部門として、昨年から見え隠れしていたこのさざ波が大きなうねりとなった1年だと実感しています。
    もっとマーケティングの世界が、ライバルに打ち勝つことやシェアを奪い合うことではなく、みんなの希望を実現させていくための意思として使われていきますように。クリエイティブのチカラが、平和のために役立つ日々となっていきますように。こんな世の中だからこそ。

    木下 一郎 Ichiro Kinoshita
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    高度な戦略とクリエイティブ故に生み出されるエフェクティブネス。
    今回はACCのME賞における「エフェクティブネス(成果、効果)」とは何かを考えさせられる審査会でした。
    もちろん圧倒的売り上げ増、伸長率、そしてマインドシェアの獲得が重要であることは言うまでもありません。
    ただ社会問題の解決、マインドチェンジ、問題提起などもエフェクティブネスとして評価されてもいいのでは?
    審査会でそんな議論を深くできたことを大変有意義に感じました。
    エントリーシートから伝わる熱意、エントリービデオのクオリティの高さ、ME賞に応募いただいたみなさまに感謝と拍手をお贈りしたいと思います。

    小和田 みどり Midori Kowada
    所属(会社)
    ライオン
    役職(肩書き)
    宣伝部長

    一昨年、昨年と2年に渡り審査委員に加えていただいたが、今年もまた数多くのすばらしい作品に出会うことができた。どれも甲乙つけがたく、非常に厳しい審査となった。コミュニケーションはメディアも手法も多岐に渡り、まさに凄い勢いで変化し続けていることは肌で感じている。その中で伝えるための各社の知恵の絞り具合、クリエイティブの鋭さ、心にずきゅんとくる施策・・・エフェクティブネスとは何か、自分に問い直し、審査委員全員が何度もため息をつき、頭をかかえました。そうした中で受賞されたみなさん、おめでとうございます。改めて広告の力は凄い!と実感しました。この部門がさらに活性化することを期待します!

    清水 健 Ken Shimizu
    所属(会社)
    アサツー ディ・ケイ
    役職(肩書き)
    エグゼクティブ・クリエイティブディレクター/コピーライター

    キャンペーンを完成させるには「勇気」が必要だと思う。どんな素晴らしいアイデアがあっても「勇気」がなければそこまでのことだ。「勇気」を持って提案する、採用する、実行する。今回、ファイナリストであったが、湖池屋のキャンペーンは「勇気」を感じた。すべてを一新する、この大事なキャンペーンに普通の女の子を起用して、でっかい声で歌わせた。勇気あるなー。でも、この表現だからこそターゲットに刺さりまくるのだから、ちゃんとマーケティングしている。CMで握手して、店頭・パッケージで握手して、味で握手する。この完成度には嫉妬する。ME部門は年々レベルが高くなっている。来年も「勇気」ある仕事に嫉妬したい。

    能登 健裕 Takehiro Noto
    所属(会社)
    東急エージェンシー
    役職(肩書き)
    エクスペリエンス クリエイション センター 副センター長
    エグゼクティブ・クリエイティブディレクター

    社会課題を解決するのが世界的にアワードのトレンドだけれど、MEの場合は、それがブランドの価値と結びついているかが問われたと思う。商品の使命とは無関係だが、社会課題にコミュニケーションで取組み一定の評価を獲得しようと試みるキャンペーンの評価は伸びなかった印象がある。ロート製薬の排卵日予測検査薬のように課題から生まれた商品だけでなく、ユニクロのキッズキャンペーンやカロリーメイト、オープンハウス、inゼリー、象印も、それぞれ日本の慢性的な課題に商品とクリエイティビティで創ったソリューションがあった。グランプリはその象徴だったように感じる。MEは広告主、広告会社、制作会社が総意でめざす意義の大きさを感じます。

    藤井 久 Hisashi Fujii
    所属(会社)
    博報堂
    役職(肩書き)
    執行役員(クリエイティブ担当)

    うちの会社(広告会社)で、「ACC賞ME部門を獲りたいです」と言う若いクリエイターは、意外と多い。世の中において「新しい効果」を生みだす、その戦略と表現を組み立てるのが楽しい、と言う。自分がME部門の審査委員をやっているから、ということも大いに影響しているのだが、こう言ってくる若いクリエイターは、とても頼もしく思える。応援したくなる。わかってるなぁ、と言いたくなる。ブランドの持つ可能性を最大化し、成長させるチャレンジこそ、クリエイティブなのだ。そう、大きな声で言いたくなる。もちろんこのチャレンジは、得意先との協働作業でしか生まれないわけだけど、そこがまた楽しいのです。

    山口 有希子 Yukiko Yamaguchi
    所属(会社)
    日本アイ・ビー・エム
    役職(肩書き)
    マーケティング&コミュニケーション デジタルコンテンツマーケティング&サービス 部長

    マーケティングの効果を評価する「マーケティング・エフェクティブネス部門」の中で、今回はプロダクトプロモーションでなく、ワーク・ライフ・バランスという「社会課題」への取り組みがグランプリを取ったことは注目すべきことだと思います。社会に対するマーケティングの責任や可能性を改めて感じた今年の審査でした。
    ME部門の審査はとても難しいがとても興味深い。いろいろな尺度の「効果」を確認しながら、それぞれの企画の思いや工夫やチャレンジを理解して、きちんと判断しなければ、という審査委員メンバーの熱い思いで審査会が行われています。
    そんな審査を通過され受賞された皆様、本当におめでとうございます!

  • インタラクティブ部門 審査委員長

    須田 和博 Kazuhiro Suda
    所属(会社)
    博報堂
    役職(肩書き)
    エグゼクティブ・クリエイティブディレクター
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。

    審査方針は「ソレって広告なの?
    →「コレこそ広告でしょ!(21世紀のね)」でした。自分なりには、かなり意気込んでまだ見ぬ「新しい広告のカタチ」を見つけたいと思っていました。見つかったモノも、見つからなかったモノもあります。審査会の席で、ある審査委員から「ソレって広告なの?を探すなら、得点の合計や平均が高いものでなく、審査委員ごとのバラつきが激しいモノをこそ抽出すべきではないか?」と言われました。極めて合理的な意見だ!と思いました。

    Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について

    今年の審査で再確認したことは「映像的なモノの、圧倒的な強さ」でした。グランプリはじめ、上位入賞作のいくつかは「映像的なモノ」のパワーがみなぎっています。Webインタラクティブは、もちろん映像を否定するものではありません。 20世紀のワインを、21世紀のボトルに入れる喩えのように、人類や広告人が積み上げて来たあらゆるスキルの成果を、現在の器にいれて縦横無尽に使ってこそ「広告の未来のカタチ」だと言えるでしょう。

    Q3 若いクリエイターに一言

    自分は今、50歳です。日本人の平均寿命は、やがて100歳になるそうなので、うまくいけば50年後の広告を見ることができます。その頃、どんなカタチの広告になっているのか想像もつきませんが、ワクワクします。若い皆さん!お互い、健康第一で長生きしましょう!

    インタラクティブ部門 審査委員

    大八木 翼 Tsubasa Oyagi
    所属(会社)
    SIX
    役職(肩書き)
    クリエイティブディレクター/共同執行責任者

    僕はひっそりと、ひとのこころのありようを自在にデザインするのがインタラクティブ・クリエイティブの真髄だと思っている。課題解決のための創作物として出発した広告が、窮屈な媒体の枠を抜け出し、世の中に向かって自由に生き生きとした表現をぶつけだした。それはリアルタイムでユーザーを巻きこみ、ときに共に成長し、ごく稀に、時代の共有感覚をつくりあげていく。リオ2016オリンピック大会閉会式は、あらゆる意味で圧倒的だった。あの出来事を、体感する前の自分とした後の自分は、明らかに違う。そんな、世の中を動かすような熱源を、僕もつくりたいとあらためて思った。

    落合 陽一 Yoichi Ochiai
    所属(会社)
    筑波大学 / Pixie Dust Technologies
    役職(肩書き)
    学長補佐・助教 / CEO

    インタラクティブという言葉は溶けたのだろうか? そんな疑問を残した審査だった.かつての対話型Webインターフェースやアプリではなく,総合的な体験の粒度を上げる広告が賞に繋がっていたと思う.つまり今ここで起こっているインタラクションはエンドユーザーとシステムとのインタラクションではなく,インターネット社会につながる膨大な数の「末端」と「末端」を繋ぐ「エンドトゥーエンドの感応」を探すことが,今の時代の広告なのだろうと最終的には決まるころには自答した.閉じたループやその場の面白さを超えて,大きなネットワークやコンテクストに接続するプロの作品群が受賞したと思う.そんな力作たちを審査できて光栄だった.

    倉又 俊夫 Toshio Kuramata
    所属(会社)
    日本放送協会(NHK)
    役職(肩書き)
    放送総局 デジタルコンテンツセンター 副部長

    受賞した皆様、おめでとうございます。
    審査委員を務めるのも2年目、今年だから見えてきたという点があります。
    メッセージを届けることももちろん大切ですが、そのメッセージをどこで、誰に伝えるのか、が今まで以上に問われているということです。そのメッセージを伝える環境も考えて、時には、その環境さえも作り出してしまう。媒体の縛りがないインタラクティブ部門ならではの、そんな状況が見えてきました。
    NHKもテレビ放送を軸に、ネットでの展開を試行錯誤している中、皆様の奮闘を、審査を通して垣間見れたことは、大変貴重な機会でした。今後も、皆様と一緒に、時代を切り拓くことができればと思っております。ありがとうございました!

    小池 博史 Hiroshi Koike
    所属(会社)
    役職(肩書き)
    インタラクティブコミュニケーションエキスパーツ/理事長
    イメージソース/代表取締役
    ノングリッド/代表取締役

    オンラインはプラットフォームとしてマーケティングよりな作品が多く、新規性はオンラインを飛び越えたリアルな領域で見られるようになりました。様々な表現やアプローチがあってもコミュニケーションがより重要視される部門だなと感じました。プラットフォームとしての成熟と倦怠感もありつつ、新しいことも生まれてくる黎明期が混在する混沌とした時期に審査させていただいたのは、とても難しかったですがとても勉強になりました。

    齋藤 精一 Seiichi Saito
    所属(会社)
    Rhizomatiks
    役職(肩書き)
    Creative Director / Technical Director

    広告というものは世の中を写す鏡かもしれない。特にインタラクティブの作品はCMやほかメディアとは違い体験を伴うもので、本年の受賞作品が展開された昨年は人々が強く体験を求めていることが特徴だと思う。ただ、その「体験」の形態は確実に変わっており、物理的に参加するものだけではなく、自分の記憶をコンテンツの中に投影できる作品やテレビの前でドキドキしながら見守る等も含めて体験となった。人々は何を求めているのか?人々に何を伝えていきたいのか?沢山のクリエイティブに関わる人間がこの”答えのない問い”を今の道具をつかって探求している。僕も含めまだまだ我々のやれることは多いと感じた審査でした。

    白井 明子 Akiko Shirai
    所属(会社)
    ローソン
    役職(肩書き)
    デジタルプラットフォーム部シニアマネジャー

    3年目のインタラクティブ部門審査会でしたが、広告賞の審査とは思えないほど理系の用語が飛び交っていました(笑)。
    インタラクティブ部門の審査委員は多様性に富んでいて(アカデミック・代理店・クライアント・メディア)、それぞれの分野の用語も違い、それがゆえに活発な議論の飛び交う審査会でした。

    白土 謙二 Kenji Shiratsuchi
    所属(会社)
    個人 フリーランス
    役職(肩書き)
    思考家

    リオの会場で披露された「東京オリンピックやパラリンピック」の予告パフォーマンスの、デジタルとネットワークをフル活用して描いた『表現の力』は圧倒的で、国内でややネガティブに傾いていた、この巨大イベントのブランドイメージを一挙にポジティブな方向に転換させた力は、新たな広告の表現領域として評価されるべきだと感じた。一方、その対極にある小さなプロジェクト、「世界初!漁師によるモーニングコールサービス FISHERMAN CALL」や、賞は逃したものの「佐賀のり/名刺のりプロジェクト」、「岩手日報の、最後だとわかっていたなら」等は、地方からのエッジの効いた“意味のある表現”へのチャレンジとして強く印象に残った。

    菅野 薫 Kaoru Sugano
    所属(会社)
    電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo
    役職(肩書き)
    グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

    ACCにインタラクティブ部門が設立して4年目。縁があってその立ち上がりから審査委員をさせていただいておりますが、この部門で審査するのは本当に難しい。広告クリエイティブの最前線を担うクリエイターたちが多方面で果敢に切り開いている新しい領域を、ある特定の基準で評価しなければならない難しさ。その年にうまれた良い仕事を評価していると思っていますが、全ての良い仕事を評価しているとは決して言えない。贈賞出来ていない仕事にこそ未来が隠されているのかも。これからも、広告業界のあり方と照らし合わせて常に進化しつづける賞であって欲しいと願っております。今年良い仕事をした皆様、本当におめでとうございます!

    田中 耕一郎 Koichiro Tanaka
    所属(会社)
    PROJECTOR
    役職(肩書き)
    クリエイティブディレクター

    「広告のアイデアは、ブランドや商品との関係性において価値づけられる」という意識がなんども揺さぶられた。この映像、エンターテインメントとしてはすごいけど、ブランドとどう関係しているの?この仕組み、アイデアは素晴らしいけど、ブランドと関係なくない?そうやって関係性の有無、濃淡、在りかを問いながら、ジャンルの違う審査委員からの自由なコメントを聞くと、ときどき根っこからぐらぐらくる。そこから、ナルホドこういう関係性もありなんだという気づきが生まれてくるのは得難い経験で、とても勉強になりました。

    刀田 聡子 Satoko Toda
    所属(会社)
    宣伝会議
    役職(肩書き)
    月刊『ブレーン』副編集長

    「広告の新しいUIを見つける」という審査方針と、クラフトや表現の完成度が拮抗し、その結果、後者がパワーで押し切った審査だったと思います。作り手の熱量が込められた映像表現には、切り口やアイデアの新規性を上回る迫力がありました。ブロンズや各カテゴリー賞には、「宅配試乗」や「ユニクロ キッズ」「フレフレ、部活。母校にinゼリー」などサービス開発に近いコミュニケーションが多数入っていて、こうした試みに新しい広告の胎動を感じます。

    馬場 鑑平 Kampei Baba
    所属(会社)
    バスキュール
    役職(肩書き)
    クリエイティブ・ディレクター

    今回初めて審査に参加させていただいたのですが、インタラクティブという名のもとで多種多様なメディアや手法を使ったプロジェクトがエントリーされている中、どう時代を捉え評価の視座を定めるか、審査委員のみなさんで意見を出し合い、カテゴライズし、序列化していくプロセスは、正直こんなに大変な作業なのかと尻込みしつつも、とても楽しく貴重な経験でした。
    今、改めて受賞した作品をみると、特に上位のプロジェクトは、作り手の過剰なまでの熱量が大きな時代の物語性の中にうまくプロットされているように思います。そういうものは今を生きる人を勇気づけるだろうし、時を経て振り返った時にも輝いているんじゃないかなと思います。

    横澤 大輔 Daisuke Yokosawa
    所属(会社)
    ドワンゴ
    役職(肩書き)
    専務取締役CCO

    今回の審査会では広告のインタラクティブとはなにか、ということを考えさせられました。メディアとはなにか。コンテンツとはなにか。広告とはなにか。情報もデバイスも多様化し、それを享受するユーザーの価値観も多様化しています。ユーザーにメリットがなければ見てもらえないという状況の中でいかにコンテンツと結びつけてユーザーにジブンゴト化させるかが重要な評価ポイントとなった気がします。

  • メディアクリエイティブ部門 審査委員長

    小山 薫堂 Kundo Koyama
    所属(会社)
    役職(肩書き)
    放送作家/脚本家
    京都造形芸術大学副学長
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。

    審査会は、刺激も多く勉強になり、そして何より楽しかった。CM、テレビ、ラジオ、ネット、さらにクライアントまで、メディアのクリエイティブにかかわるオールジャンルの人が集い、それぞれの立場から出される意見には、新しい時代のヒントが溢れていたように思う。
    そうした中で、評価のポイントに置いたのは、「ちゃんと結果が出ているか」ということ。クライアントあるいは、作り手のゴールテープがきちんと切れているもの、広く世の中に浸透しているものを評価する・・・これをひとつの指標とした。

    Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について

    集まった作品には、メディアのジャンルによって様々な特徴が見られた。苦しんでいる分、他のジャンルよりも工夫を重ねている印象があった新聞、クリエイティブのレベルは安定しているものの、新しい何かを模索しようと、他のメディアと手を組んでいたテレビなど。
    新設ジャンルへの期待が高すぎたあまり、残念ながら今回グランプリは出なかったが、惜しくもあと一歩のところでゴールドに留まった「歩くーぽん」は、放送局が中心となって運動不足という課題解決に取り組み、テレビCMを使いながら地域の人々に呼びかけ、さらにスマートフォンアプリを使って店舗に集客していく、というアイデアがとてもよかった。

    Q3 若いクリエイターに一言

    アイデアや企画は出会い。この出会いのボールを誰に投げるかというのが大切。自分のアイデアを却下された時、それは「すべて無し」ではなくて、「この人には無い」ということ。だから、それは捨てずに自分の中のクリエイティブの宝箱にしまっておく。どんどん増えていけば、それが財産になるから。どこかでまた引っ張り出して、磨き上げていくというクセをつけていってほしいなと思う。

    メディアクリエイティブ部門 審査委員

    佐藤 宏 Hiroshi Sato
    所属(会社)
    広島テレビ放送
    役職(肩書き)
    報道制作局長

    東京で活躍される錚々たる方々の中で、唯一、地方から参加させていただきました。評価の基準としたのは「面白いアイデアにとどまらず、視聴者や読者を行動させる作品」です。中でも「避難所もっとより良く非常袋#並べる防災」(神戸新聞社)は秀逸でした。新聞紙に印刷された非常用備品の上に、実物を並べることで、読者に何が必要かを気づかせ、準備という行動レベルに引き上げています。報道によって情報を伝えることはできても視聴者に行動してもらうことの難しさを痛感している私にとって目からウロコのアイデアでした。それぞれの知恵と汗が詰まった148の力作たち。日々悩めるメディア関係者にとって、貴重なヒントになることは間違いありません。非常に学びの多い審査会でした。

    嶋田 三四郎 Sanshiro Shimada
    所属(会社)
    博報堂DYメディアパートナーズ
    役職(肩書き)
    エクゼクティブマネージャー / メディアコンテンツプロデューサー

    「メディアクリエイティブ部門」の審査に関わらせていただいた事、大変光栄に思っております。
    審査を通じて、様々なメディアを使った新たなチャレンジに出会い、自分自身たくさんの刺激をもらいました。
    メディア毎の特性に、アイデアが重なる「クリエイティビティ」が、「ブランド」と「メディア」と「オーディエンス」の間に「ハーモニー」を生み出し、世の中の人を動かす!…それが「メディアのチカラ」という事を今一度自分の心に刻む事が出来ました。
    この「メディアクリエイティブ部門」が、メディア同士のコラボレーションの場になり、従来のセオリーを超えた無限のクリエイティビティが生まれる部門に進化していく事を願っております!

    立本 洋之 Hiroyuki Tachimoto
    所属(会社)
    フジテレビジョン
    役職(肩書き)
    編成局次長

    新しい部門ということもあり当初どのような基準で審査をすべきか正直とても迷いました。しかし、作品を見ていくうちにアナログとデジタル、リアルとネットなど様々なメディア空間を利用した様々なアイデアを目にし、非常に刺激を受ける事になりました。
    また、審査会そのものもある意味アイデアのブレストに近い議論の場として大変面白く、勉強になる場でもありました。
    今回最優秀賞は選出されませんでしたが、今回の優秀作品を参加者の皆様がご覧になることで、さらに刺激的で面白いアイデア、作品が生まれ、次回エントリーされてくるものと確信しております。
    優秀作品の皆様に祝辞を申し上げたいと同時に、今回選ばれなかった作品の中にも多数面白いものがあったことも併せて申し上げておきたいと思います。

    谷口 洋一 Yoichi Taniguchi
    所属(会社)
    テレビ朝日
    役職(肩書き)
    営業局 メディアマーケティング部 部長

    未知なる新ジャンルで、期待と不安が入り交りつつ、手探りで審査を始めたら…なんと…膨大な作品数を審査するというより、何か可能性を秘めた魅力あるコンテンツ、考え方に接する機会を与えて頂いたことに感謝感激…「実に楽しかった!!」というのが率直な感想です。
    テレビというマス媒体に留まらない縦横無尽の刺激的なアイデアが、巡り巡って再び我々テレビ界を刺激する様は心地よささえ感じました。
    来年以降もますます、この部門への期待は高まるばかりで、我々テレビ界も「絶対に負けられない…熱い戦いがそこにはある」魂の鼓動が再び、唸りをあげる!!

    村本 美知 Michi Muramoto
    所属(会社)
    アサツー ディ・ケイ
    役職(肩書き)
    コンテクストプランニング本部
    リ・マーケティング局 局長

    異なるメディア事情、独特のエリア事情、個別のマーケティング事情、一様に比較できない事情を背負った力強いエントリーの数々に、評価基準の模索から始まった審査会。「このメディアアセットって?」「実際マーケティングにどんなインパクトが?」「理由はともかく好き!」広告主、メディア、広告会社からの多様な審査委員達の鋭い視点や熱いコメントが交錯し、メディアの奥行きを沢山考えさせられました。結局私達は、審査を通じてメディアクリエイティブの可能性や未来を語り合っていたように思います。「きっともっと、やれるね。」そしてこの審査会と同様の熱い議論が、各社の今後の企画会議で繰り広げられることを早くも期待してしまいます。

    森川 亮 Akira Morikawa
    所属(会社)
    C Channel
    役職(肩書き)
    代表取締役

    今回初めて審査委員になったのですが様々な媒体で媒体特性を生かすような工夫がされていてむしろ私自身が勉強になりましたし、もっともっと自身のメディアや自身のマーケティング活動においても新しい挑戦や工夫が必要だなと反省しました。特に新聞やラジオなどどちらかというと広告効果を出すのが難しくなっている媒体ほど新しい挑戦や工夫がされていて刺激になりました。またメディア特性とは何かという点においても新しい発見がありました。また1つのメディアに限らずそれぞれのメディアの特性を生かしクロスメディア展開をしている作品も多く、次にどんな作品が生まれてくるのか今後の審査がとても楽しみです。

    森田 太 Futoshi Morita
    所属(会社)
    TOKYO FM
    役職(肩書き)
    執行役員 編成局長 兼 グランド・ロック代表取締役

    ラジオ局からは唯一の審査委員としてACC初参加しました。
    「メディア×アイデアで、最終的に”何かの課題解決に貢献しているもの”」という難解な基準での審査に怯んでいましたが、実際参加してみると、ここ最近の企画会議と比較しても、群を抜いてワクワクとした、楽しい時間となりました。
    何かの課題解決のために仕事はあり、広告主さんにとっても商品が売れる売れないだけの目的に終始せず、(難しいんでしょうが)最終的には、人生が豊かになったり、大きく言えば、それが人類の未来や、人の心の問題を解決する事に繋がっていくことが、本気で親指立てて言い放てる、グッドな広告クリエイティヴなんだろうなと思いました。

    湯川 昌明 Masaaki Yukawa
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    ラジオテレビ局 局長補

    選考を通じ、色々なアイディアを拝見する機会を頂いてありがとうございました。まず自分自身がもっとチャレンジすることや、向上心を以って学ぶことが必要だと痛感しました。
    選考の場で特に意見が出たのは、結果としてのOUTPUTが大変優れているものの、それがクリエイティブ力が大きく寄与したものなのか(そのメディアでなくとも成立するものなのか)、技術に寄ったものなのか?と言う点です。特にデジタルメディアは技術躍進によって実現できる広告手法の幅は広がっていますが、ポイントは広告主の課題に最適な媒体と手法と広告表現の総合的なパッケージになっているか、ではないかと思います。メディアアセットを活用したトータルの広告表現には、まだまだ人間が考える広義のクリエイティビティ力が必要だと感じました。
    条件はスケールでも新旧でもありません。メディアの皆様もぜひ積極的にご応募ください!

    和田 龍夫 Tatsuo Wada
    所属(会社)
    サントリーコミュニケーションズ
    役職(肩書き)
    執行役員 宣伝・デザイン本部 副本部長 兼 宣伝部長

    これまで色んな広告賞の審査等に関わってきましたが、今回ほど面白い審査会は初めてでした。
    新設された部門だけに、「メディアクリエイティブとは何か?」、「審査基準をどう考えるか?」について議論が白熱しました。その中で、この賞は今後の広告ビジネスの中でもっともっと重要性が増してくると確信しました。
    審査において、私がこだわったのは「この手があったか!」という従来のメディアの枠を超えたアイデアです。
    今回は残念ながら「グランプリ該当作なし」という結果に終わりましたが、それはこの賞はもっと可能性があるということを未来へのメッセージとして発信したかったからです。
    来年こそは是非、これぞグランプリという作品を期待しています。

    和田 直樹 Naoki Wada
    所属(会社)
    トヨタマーケティングジャパン
    役職(肩書き)
    メディアプランナー

    メディアボーダレス。お客様のメディア接点は多岐に渡っており、コンテンツを見せる形やタイミングは大きく変化している。その中でのチャレンジとは、そういったことを熱く議論した審査だった。「企業が伝えたいこと」と「生活者が知りたいこと」のギャップを“適切なコンテンツとタイミング”で埋めて関係性を構築し結果を出せているか、それを改めて考えるためにこの部門が新設されたように思う。
    メディア・広告会社・クライアントが課題を共有し、新たな枠を作っていくことを後押しするこの新設部門は今後ますます面白くなる部門・テーマと感じました。

  • クリエイティブイノベーション部門
    審査委員長

    暦本 純一 Jun Rekimoto
    所属(会社)
    東京大学/ソニーコンピュータサイエンス研究所
    役職(肩書き)
    教授/副所長
    Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。

    ACCクリエイティブイノベーション部門は今年初めて開設された賞で、現時点でのビジネスの大きさよりも、新しいチャレンジをより評価することで、まだ人々が知らない、未来を創り出す原石を発見し、世界に発信し応援していきたいというのが基本的な審査方針です。すでに市場に投入しているもの、現実の課題に取り組み解決しているもの、さらには、研究・試作段階ではあるが大きな可能性を感じさせるもの、をそれぞれの特質に応じて審査しました。

    Q2 作品の傾向およびグランプリ作品について

    初年度から予想を越えた多数の応募がありました。斬新な技術を持つもの、生産工程などの仕組みを革新していくもの、利用者の使いぶりが発展していきそうなものなど、魅力的な応募が多く、優劣をつけることが難しい審査でした。その中で、グランプリを受賞された「COGY/あきらめない人の車いす」は、車椅子の可能性を広げ、車椅子使用者と歩行可能者との境界を変化させる「あきらめない」というコンセプトを、精妙な機構によって見事に具現化していることが審査委員から高く評価されました。

    Q3 若いクリエイターに一言

    自分が住んでみたい未来になるには、何が足りないでしょうか。あたりまえだと思ってあきらめているものは何でしょうか。現状からの足し算だけではなく、われわれを一気に未来に引っ張っていってくれるような、夢が広がるものを期待しています。

    クリエイティブイノベーション部門 審査委員

    安宅 和人 Kazuto Ataka
    所属(会社)
    ヤフー
    役職(肩書き)
    CSO(チーフストラテジーオフィサー)

    データやAIならともかく、自分がクリエイティブ系の審査委員とは。アイデア×テクノロジー=イノベーションを掲げ、プロトタイプもあれば実製品もあるという実にユニークな賞。審査委員はカラフルで多士済済。審査の間も名言が数々。エクセントリックな人が5万人増えると変わる、組織の中にウイルスを。暦本先生からあった黒澤明監督の「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」という言葉が深く心に残った。天使度がちょっと足りない、悪魔度が、という議論が色々されたのは楽しい裏話。テクノロジーというとICTバリバリみたいなイメージですが、おっと驚く仕掛けのCOGYがグランプリ。未来を揺さぶりたい人に応えるそんな審査会でした。

    池澤あやか Ayaka Ikezawa
    所属(会社)
    東宝芸能
    役職(肩書き)
    タレント/クリエイター

    今回のアワードには、製品やプロトタイプ、広告、キャンペーン、研究、プロジェクトなど、分野の垣根を超えて、さまざまなものが集まりました。これをどのような軸で評価すればいいのか、とても頭を悩ませました。議論の末、「未来の礎になるようなもの」を積極的に評価することになりました。
    総務大臣賞/ACCグランプリを受賞した「COGY/あきらめない人の車いす」は、車いすでありながら、足を動かすためのリハビリにもなる、足を動かすことを諦めかけた人たちの未来を変えるような素晴しいプロダクトです。このコンテストが、こういった「未来を変える力があるモノ」を多くの方に知っていただくきっかけになりますように。

    稲田 雅彦 Masahiko Inada
    所属(会社)
    カブク
    役職(肩書き)
    代表取締役 CEO

    クリエイティブインダストリーでもある広告・マーケティング・プロモーション業界が、今やIoT機器開発やサービス開発は当たり前となった昨今、ACCもアカデミア、スタートアップといったプレイヤーも参加できる様になったのは感慨深い。審査もこうした流れで、作品も多種多様、議論も多様性があり切れ味がありで、刺激的な会でした。かつては広告業界に身を置き、今はスタートアップ経営を行う立場となった自分にとっては、ゼロイチからイチヒャク含めて、すべてを包含する大きなクリエイティブインダストリーになって欲しくもあり、ACCクリエイティブイノベーション部門もこれから大きく羽ばたいて欲しいと思います。

    井上 裕太 Yuta Inoue
    所属(会社)
    QUANTUM
    役職(肩書き)
    Startup Studio事業責任者

    本部門を立ち上げる際、目指す方向性を決めた。
    ①テクノロジーとクリエイティビティの融合、②多様なチームによる異種格闘技戦、③ビジネスのサイズではなく新たなアイデア(よってプロトタイプも対象)。
    どの受賞プロダクト(プロトタイプ)も新鮮なアイデア、それを実現するためのサイエンスとテクノロジー、それらを体験に昇華するデザインとストーリーテリングの融合によるものだった。
    受賞者はスタートアップ、大学研究室、大企業内新規事業チーム、そして広告会社。ここまでの受賞者の多様性を持つ賞も珍しい。
    審査は、いわば賞のプロトタイピングだった。進化するβであり続ける賞のプロトタイプ第一号に、ぜひフィードバックを。

    佐々木 紀彦 Norihiko Sasaki
    所属(会社)
    ニューズピックス
    役職(肩書き)
    編集長/取締役

    何よりも審査委員の豪華さにまず驚きました。各界の泰斗が勢ぞろいしており刺激的でした。審査作品も、どれを選ぶか迷いに迷う高レベルなものばかり。こうした審査会には何度か出たことがありますが、かつてないクオリティでした。印象的だったのは、テクノロジーとクリエイティブが高次に融合している作品が多かったことと、大企業発のイノベーションが増えていることです。双方とも、日本ならではの強みが生かせる点だと思いますので、ぜひACCが日本発で世界を驚かすイノベーションの登竜門になってほしいと思いました。来年以降のさらなる進化を期待しています。

    佐々木 康晴 Yasuharu Sasaki
    所属(会社)
    電通
    役職(肩書き)
    第4CRプランニング局長
    デジタル・クリエーティブ・センター長
    エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    クリエイティブイノベーション部門は、間違いなく、広告会社の未来を占う部門になると思いました。プロダクトあり、プロトタイプあり、まだ研究段階の荒削りなアイデアもあり。そのなかに、従来の広告表現の枠は超えているけれども、イノベーションの皮をかぶった、話題性のみを狙った広告的な応募作がちらほら混じる。細部まで検討しつくされて生まれたプロダクトと比べると、広告会社のクリエイティブがつくるそれは、まだまだ刹那的です。広告という種目が急速に変化するなか、僕らは表現の企画だけでなく、ビジネス創造もできるクリエイティブに進化しなければならない。来年、この部門にどれくらい広告クリエーターが入り込めているか。楽しみでもあり、怖くもあります。

    鈴木 雅穂 Masaho Suzuki
    所属(会社)
    トヨタ自動車
    役職(肩書き)
    未来プロジェクト室 室長

    新設部門ということもあり、審査会では様々なアングルで非常に活発な議論が成されました。その結果として、多様なステークホルダーからの、領域としてはビジネス、社会課題解決、知育など幅広い分野で且つ商品化済から実験段階、コンセプトレベルまで様々な作品が入賞作品として選ばれました。多様なイノベーションへのチャレンジを期待するという今後の同賞の方向性を指し示すことになったのではないでしょうか。個人的にも自動車業界関連の作品がファイナリストに3つ残るなど、業界においてイノベーションの余地が多分にあると実感し、来年の応募が非常に楽しみであると共に提案者としてのチャレンジも考えなければとの想いを強くしております。

    野添 剛士 Takeshi Nozoe
    所属(会社)
    SIX
    役職(肩書き)
    クリエイティブディレクター
    代表取締役

    初物というのには、いつもドキドキします。審査委員で事前に集まった時の話題は、「初年度に応募作品がちゃんと集まってきてくれるんだろうか?」でした。でも、そんな気苦労は全くの大きなお世話でした。メジャークライアントの新規事業から、ベンチャー企業、大学の研究レベルのものまでが壁に貼りきれないほどに集まり、それを横一線で様々なバックグラウンドの審査委員が議論していくという面白さと難しさ。結果として事業化の壁を乗り越えてきている仕事がプロトタイプよりもやや強かったのは、僕らはやっぱり、こういう場でも、「リスクを負って戦っている者」に心を動かされたいんだなと思う。

    深田 昌則 Masa Fukata
    所属(会社)
    パナソニック
    役職(肩書き)
    アプライアンス社 Game Changer Catapult代表

    近年クリエイティブ業界が、単なる派手な宣伝やブランドイメージ向上だけなどのための奇をてらったアイデアを提案するだけではなく、真面目にビジネスに取り組み新規事業を立ち上げる調整をするケースを見かけることが多くなってきました。我々も社内のアイデアだけではなく、幅広く様々な方々とお付き合いしながら新しい価値づくりに邁進したいと思っています。このカテゴリーには社会課題解決型の事業や、生身の人間でないと思いつかないようなハッとする鮮やかなアイデアの数々が揃っていて、これから大きく日本や、世界を変えていく本質的な流れが見えて来ていました。これからも楽しみなカテゴリーです。

    朴 正義 Masayoshi Boku
    所属(会社)
    バスキュール
    役職(肩書き)
    代表取締役 / クリエイティブディレクター

    ファイナリスト本人がプレゼンするという最終審査会は新鮮で面白かった。逆に言えば、それまでに面白いものを落としてしまったかもしれないという不安も感じた。どうしても応募書類だけではわからないところがあり、異なる領域の作品を適切な評価軸で審査できているのだろうかと疑念を感じてしまうほどだった。でも、だからこそ、このクリエイティブイノベーション部門が生まれた意味があると思うので、新しい領域に挑むクリエイターを後押しできる賞として、うまく育ってくれるといいな、育てていきたいなと思っています。

    森岡 東洋志 Toyoshi Morioka
    所属(会社)
    1-10drive
    役職(肩書き)
    CTO/テクニカルディレクター

    クリエイティブイノベーション部門は今年新設された部門のため、個々の応募作品について議論しながらも、『そもそもこの部門はどういった部門なのか、どういった評価軸で評価すべきか』を常に考えながら発言が交わされました。
    手探りながらも「イノベーションとは何か」を審査委員が問いかけ合う、非常に面白い議論をしていたように思います。
    結果、デバイス、Webサービス、プロトタイプ、研究とバリエーション豊かな候補がノミネートされることになりました。