2016 56th ACC CM FESTIVAL 審査委員コメント一覧

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審査委員コメント一覧

フィルム部門審査委員長

古川 裕也
Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。
日本の賞の中には、ほぼ単純な多数決で決まるものもあるけれど、それは、それほどおもしろくない。せっかく、これだけのメンバーにお願いしたこともあって、みなさんの意見をたくさん聞くことを基本方針にした。もちろん最後はvoteで決めるのだけれど。とくにBカテゴリーに関しては、去年よりずっと多様な傑作が並んでいて、僕自身、ああ、そういう見方もあるのか、と何度も思うことになった。高度な審査委員による審査ほど勉強になるものはない。なんだか申し訳ないけれど。
Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について。
フィルムの審査はここ数年、世界的にconfusionの中にある。フィルムを創るという仕事が、拡張している真っ最中だからである。これは僕たちの仕事の分母が、CMからFilmに変化しているということを意味する。このconfusionを、僕はとてもいいことだと考える。何か新しい可能性が現実化するとき、適切なconfusionは、むしろ豊かな果実をもたらすはずだからだ。
Bカテゴリーのグランプリ候補は4本。「END ALS:I'M STILL」「内閣府:毎日話せば詐欺は防げる」「資生堂:High Scool Gilr!? メーク女子高生のヒミツ」「宮崎県小林市:ンダモシタン小林」。対象は、CM以外の映像表現によるクライアント・ワーク。クライテリアは、"freshness of idea”。とはいえ、この多様な4本から1本選ぶのは極めて困難で、議論と投票が繰り返された。最終的には、フィルムの仕事を最も拡張したのではないかという観点から、グランプリが選ばれた。
Aカテゴリーは対照的にauの圧勝だった。日本で今いちばんヒットしているキャンペーンであることもあるが、なにより高く評価されたのは、これだけ続いているシリーズが、明らかに去年より進化していることだった。
Q3 若いクリエイターに一言。
Bカテゴリーが若者向きでチャンス、と思えるかもしれないけれど、そんなことはない。どちらにも等しくチャンスはある。ほんの数年前に比べても、ずいぶん多様な仕事が高く評価されていると思う。

フィルム部門審査委員

佐々木 宏

最終審査日がリオのパラ閉会式と重なりましたが、期日前投票で参加できました。ガリガリ君が、絶対王者auに勝つと一波乱あり、面白かったですが、ま、無理でしたね。テレビ埼玉、武蔵野銀行、長崎バス、滋賀県三成、という地方のブランドに秀作が多かったのは事実ですが、普段よく観るCMが弾け飛び、世の中的には、最近CMロクなのないということになってやしないか、やや心配。
三成は、面白いです。滋賀琵琶湖しかないイメージからの脱却には時間かかるとは思いますが、ぜひシリーズ化を。京都に負けない文化財産もあるエリアですから、なるべくチープにならないと良いですね。

佐藤 カズー

文句なしにauの年であったと思う。圧倒的な出稿量でこれだけ世の中をエンゲージしたのだから。でも個人的には赤城乳業をグランプリにしてもいいとどこかで思ってたような気がする。25年振りに行った10円という値上げ。きっと企業にとっては大きな勇気のいる決断であったはず。それを見事な謝罪エンターテインメントとしてCMに仕立てた。そして翌日のNYタイムズの1面を飾った。値上げ広告が売り上げを伸ばし、株価も引き上げ、企業価値までも押し上げた。かつてこんな事件があっただろうか?もし制作者がここまで緻密に企んでいたとしたら、、、と思うとぞっとする。これぞディスラプション。

澤本 嘉光

フィルム部門がAとBに別れてから2年目、それぞれのカテゴリーでそれぞれ特徴のあるものが上位を占めたなというのが印象です。発信者がメジャーなクライアントであろうが、小さな団体であろうが、目的さえはっきりしていれば映像で伝えていく方法はいくつもある。メディアの選定や、手法の選定、アイデアの選定、それが適切であればやはり動画は見る人の感情を揺り動かし情報の伝達に大きな役割を果たし続けると確信できる結果だと思います。付け加えれば、上位にメジャークライアントのCMが少ないのも今年の大きな特徴で、これはクライアント、クリエーターに是非奮起してほしいと思うと同時に、それには何か理由があってその理由は意外と簡単に見つかる気もしています。そこを突破することでより良い広告が制作できていくのではと期待しています。

塩崎 秀彦

「今回はどれもレベルが高いから投票で簡単に決めるのはもったいない。もっと議論しよう。」と多田さんが言った。Bカテゴリーグランプリ投票の時だ。そしてオンラインフィルムとはどうあるべきなのか?その在り方や意義について各審査委員が思うところをぶつけ合い、議論は白熱した。決して昨年議論がなかったわけではない。ただ今年のゴールド以上のフィルムには「面白い」とか「よくできてる」にとどまらない、今の時代を切り取り心の奥底に訴えかける圧倒的なアイディアがあった。それこそが審査委員を熱くさせたんだと思う。単なる再生回数獲得だけじゃない本当に何かを動かそうとする勇気あるチャレンジが多く見られたBカテに大きな刺激を受けた審査だった。

菅野 薫

フィルム部門(TVCM)だけが広告における映像を扱う時代は終わり、インタラクティブ部門でも(ACCの枠を超えればPRやプロモを含むあらゆる種目で)戦場のひとつは映像になった。しかも、ややこしいことにそれぞれで大事にしている価値観と技術は少し異なる。お茶の間でぼーっとテレビを眺めるときにふと出会う映像と、ウェブ記事やSNSでシェアされる情報から辿り着くスマホでみる映像では、必要とされる温度感も機能も異なる。昨年からBカテゴリーをつくったのはそこへの課題意識だろう。そして僕は間違いなくTVCM外から来た審査委員。だからこそ、いまの結論が完璧な正解だとは思わない。来年以降に更なる議論と提言が必要だと感じている。

髙崎 卓馬

事前審査でたくさんのCMを見る。質が高く密度の濃いものを浴びるように見るととても刺激を受ける。一年に一度心と脳を洗う貴重な時間です。今年は最終審査の前日に不意に入院をしてしまい参加できず、とても残念でした。みなさんにご迷惑をおかけしてしまいもうしわけありませんでした。
結果はなるほど、なるほど、なものでした。去年も思ったのですが、メディアの変化などでCMは逆風的に言われていますが、面白いものはちゃんと面白くて、そして話題になって結果も出しているのだなと。きちんといいものをつくりたくなりました。

多田 琢

フィルム部門Bカテゴリーはレベルが高かったと思う。ゴールドには一歩届かなかった作品も含め、どの作品も出稿量やキャストに頼らずに表現に向き合っていた。特にグランプリ「END ALS」の切実なメッセージの前では、呼吸をするのも苦しいくらいだった。「伝えたいこと」と「伝えるべきこと」の間にある大きな違いに圧倒されて、自分たちはこれから何をすればいいかわからず途方にくれた。しかし、我々が日々鍛錬している技術、メッセージを人の心に届ける技術こそ、なにかの役立つことになるのかもしれないと思うと、身の引き締まる思いがした。
「人を救うのは、人しかいない。」という石井達矢さんの言葉を思い出した。

土屋 敏男

この夏「シン・ゴジラ」や「君の名は。」が映画の成り立ち、そしてヒットの法則が『これまでとはもう全く変わったのだ』ということを“その道のプロたち”に知らしめた。そして映画の作り手たちの強い執着という“熱”が拡散するのだということも教えてくれた。「シン・CM」はどこにあるのか?それが今回の各賞の先にあるのか?それとも全く違う「そんなものはCMじゃない!」と否定されて世に出ていないものの先にあるのかはまだわからない。しかし「シン・CM」がCMの作り手たちの“熱”の先にあることは間違いないだろう。そんなことを審査しながら思っていました。ちなみにテレビはまだ「シン・テレビ」を残念ながら見つけられていない。

都築 徹

2年前、この場所で、東海テレビの仕事は発掘された。今年、自分が加わった審査委員団は、新しい可能性を掘り起こすことができただろうか。二ヶ所の地域審査に参加したが、激動する広告環境の影響を全く受けていないかのような審査委員の構成や在り方は早々に見直すべきだろう。東京ではないどこかで生まれた、まだ誰も知らない価値ある挑戦に、希望の光を当てるために。

東畑 幸多

「努力は、夢中にかなわない」とあるCDの言葉です。個人がドキドキして作っている、作り手の顔や、アドレナリンが、映像から見えてしまう。そんな表現がやっぱり強いなと、今年は改めて思いました。特に、Bカテゴリーは、良くも悪くも、レベルの差が激しく、荒々しい分、個人の顔が見える映像も多く、審査していて面白かったと思いました。もっともっと公私混同して、「好き」と「仕事」をつなげていくことが、これからは大事なのでは。個人的な感想です。

西田 淳

昨年はプロレス(Aカテ)と総合格闘技(Bカテ)の間に境界線があったが、今年はプロレスラーが続々と総合に参戦してきて、Bカテのレベルと熱が上がっていた。訓練を積んだ凄腕のプロレスラーたちが総合のルールに適応していくことは、プロレスにも良い影響を与えるはずで、日本のブランデッドコンテンツはこれからもっと面白くなる予感がした。映像が爆発的に増えている。見る側の目はどんどん肥えている。本当に届くものを作るのは、クライアントの勇気や制作者のアイディアと技術を含めた、「本気」のエネルギー量なんだと再認識できた。

蜷川 実花

今年も審査をやらせてもらいました。近いようで遠い業界、勉強になることが沢山ありました。女性が私だけだったので、女目線、母親目線を多少強化して審査にのぞみました。違う角度からの意見を多少は言えたかな、役割は果たせたかな、と個人的には思います。二年やらせて頂いて思った事は、作り手と受け手の間に、面白いと思うものに多少の温度差があるなと。どこの業界もそうですが、狭い業界なのだなと。プロフェッショナルが提案する面白さと一視聴者がお茶の間で見るリアルな面白さは、それが良い悪いとは別の問題として距離がある、そこを縮めるのか縮めないのかも含めこれからの表現を楽しみにしています。

福里 真一

商品とカンケイない気楽な会話で構成されている、au「三太郎」シリーズ。このCMがいま日本で一番ヒットしていることを、まずは認めたほうがいいんじゃないでしょうか。CMの冒頭から商品のことを語りまくったり、商品への落とし込みから逆算してストーリーを構成したりといった、いかにも「広告っぽい」顔つきの広告への拒否感は、ぼくら作り手が思う以上に進んでいるんでしょうね。個人的にはauには過去のいろいろな審査で、もう3回もグランプリに投票していたので、たまには違うのに入れたかったのですが、ちょっと対抗できるものがなかった感じです。Bカテゴリーについて書く字数がなくなりましたが(泣)、グランプリ受賞作以外に、小林市や滋賀県「石田三成」もすばらしかったです。受賞したみなさま、おめでとうございます。

山崎 隆明

グランプリのau。今年は圧倒的な強さでした。一制作者として世界観やストーリーは違うものの、ペプシのあとに桃太郎ってどうなんだろうという思いはありましたが、今年はそんな思いをも凌駕する安定感がありました。制作者の皆様、おめでとうございます。
あと、今年もし企画賞があれば、私は迷うことなく住友生命の1UPの企画に投票したと思います。生命保険のCMでこれほど個性的なものは、過去みたことがなかったので。このCM以外にも日清ラ王やNTTドコモ「Style20」、ライフカード、SansanのCMなど、タグボート麻生哲朗さんの企画は、いろいろな語り口で攻めてくる。そのプランナーとしての志の高さとプランニング能力の高さに感心しました。

村田 俊平 (2015年小田桐昭賞受賞者)

Bカテについて二つほど提案です。一つは審査方法。Bカテは、「オンラインフィルム」部門ですが、全員でTVで動画を見るやり方はAカテと同じ。インタラクティブ性が失われています。PC向けやスマホ向け動画はその媒体で見るのはどうでしょう。もう一つは募集要項。「AとB両カテゴリーに応募することはできません。」とあるものの、現状、微差でも別ムービーと解釈できます。個人的にはやはり、カテゴリーがある以上、同じ表現のムービーは一方に絞るべきかと。“同じ表現”の定義もまた難しいですが…。僕たち若い世代にチャンスがある部門だと思うので、色々なアイデアが評価されたらいいな、と思いました。
…あ!あと、”A”と”B”って名前も変えません?

ラジオCM部門審査委員長

澤本 嘉光
Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。
審査委員の顔ぶれを是非見てほしいのですが、CM制作者(作る人)だけでなく、ラジオ番組出演者(出る人)、ラジオ番組制作者(放送する人)、愛好者(好きな人)、と、多種多様のラジオ好きが年齢層も20代から?0代まで集まって議論する会は、楽しくもあり、何より色んな角度からCMだけでなくラジオというものについての議論ができました。審査方針は単純で、いいと思うものをなるべく褒める、です。足を引っ張るよりもいいところを見つけて褒めて、それが次代のラジオの何か参考になればと考えて審査しました。
Q2 今年の作品の傾向およびグランプリ作品について
傾向は、毎年前年の上位受賞作に影響を受ける作品が増える、ということで言えば、原稿をきっちりと描くCMではなく、インタビューしたものを編集してCMにするライブな感じのものが目立ちました。グランプリはその流れの逆で、きっちりとした原稿を、しっかりとした役者が演じ、はっきりとした演出力を持つディレクターがまとめるという完成度の極めて高いもので、原稿を書く、偶然力でなく筆力と想像力で作る、という基本に立ち返ったとも言える結果かとも思います。
Q3 若いクリエイターに一言(アンダー29についても含む)
ラジオCM、言い方を変えれば音の構成でCMを作ることをしていくと、動画を作る時の絶対的な基礎にもなります。何より実験的なメディアとしてその過程で色々な学びが得られます。まずは、ぜひ、ラジオCMを作ろうと考えてみてください。そして、作る時に幾つかの挑戦をしてみてください。ラジオは比較的いろいろうるさいことを大人が言ってきません。そして、それは必ずあとで自分の糧になっていきます。チャンスは探すものです、探して、作って、成長しましょう。

ラジオCM部門審査委員

今浪 祐介

ありがとうございました。今回も何百本もの力作ラジオCMを一気に浴びることができる機会を頂けました。「審査委員」という立場ではありますが、僕もクリエイターですから、自身にとっても強力に勉強になる時間。お声がけくださった澤本さんに本当に感謝です。
1本1本CMを聞きながら、そのアイデアへの感嘆はもちろん、それを「出せる環境」を構築できていることも本当に羨ましく、僕自身も「何とかならないもんか」とやっぱり嫉妬しつつ、審査をさせて頂きました。ACCの公式ホームページで「グランプリ・ゴールド・シルバー・ブロンズ」の作品を全部聞けます。あなたならどれをゴールドにするか!?チェックして頂けると楽しいと思います!

井村 光明

ここ数年「傑作」が続いたラジオグランプリですが、今年はラジオCMの原点とも言える「名作」ではないでしょうか。グランプリの大日本除虫菊、アイデアももちろん素晴らしいですが、アイデアに感心するというよりも、何度でも聞いていたくなる心地よさで好きになる。毎週同じ番組を聞くリスナーを飽きさせないための、高度な工夫が効いているように思ったのです。キリン一番搾り「度合い」篇や住友ゴム「WINTER MAXX」などもそうでした。テンポや声質などで程よく企画性を抑えた、右脳的な仕上がり。毎週リスナーとじっくり向き合う場を活かし、商品の人格まで伝えることに成功しているのではないかと。TVやWEBのCMが奇抜さを競い、急いでるように見える昨今、本当にいいもんだなあと思うんですけどね、ラジオって。

大谷 ノブ彦(ダイノジ)

今年も多いに笑いながら審査できて本当楽しかったです。あっという間に感じましたし、乃木坂46の橋本さんのあまりの可愛いさに皆デレデレでそこも素晴らしかったです。橋本さんはコメントも良かった。
審査する上で、今年から気をつけているのは、商品が頭に残るのか、あとは番組の中で聴いてみたとき、印象に残るかどうかってことです。自分の番組でこのCMながれたら心地いいだろうなぁ。CMも番組の一つなんじゃないかなって。少なくとも聴いてる人にはそう聴こえるんではないかなと。今回自分でもCMを作ってみて、作品に対する愛着も相当あって。クリエイターの人たちも皆そうなんだろうなって思ったら、審査をするってことにもっと真摯に、もっと思慮深くヤンないとダメだなって。僕が自分の作品好きすぎるだけかもしれませんが笑

権八 成裕

いろんな立場の多様な意見が聞けて実に楽しい審査会。そんな中、支持を集めたのは金鳥。「すごいやん、その浴衣」は今年1番のパンチライン。書き手の力量を見せつけ、非常に手堅い円熟の仕事ぶりで他を圧倒。キリンビールの「っ」もそのどうでもいい完成度の高さが評価された。上の2本とは逆のベクトルで勝負したマイベストジョブ。素人は非凡と平凡が紙一重で、面白さにバラつきがあったのが惜しかったがハマった時の煌めきは随一。「東京」はキュンてなるし「あだ名」「春」も素晴らしい。心のベストテン第1位は勿論「やらしい」だ。全体的な審査委員の気分として、昨今の素人フィーバーからの揺り戻しがあったか。いや、そうでもないか。

嶋 浩一郎

ラジオは想像力のメディアだと思う。「男と女がいます」とラジオで言うと、リスナーがそれぞれ頭の中で男と女を思い浮かべる。それができるのがラジオの強み。いいラジオCMはこの想像力を羽ばたかせる。グランプリを受賞した大日本除虫菊の「金鳥少年シリーズ」。誰もが頭の中にそれぞれの高山さんと大沢くんを想像したはずだ。その証拠にSNSでは多くのリスナーが二人のキャラについて議論している。ラジオの持つ力を感じさせてくれた。

遠山 大輔(グランジ)

3年続けてお声を掛けて頂き、今年も審査させて貰いました!自分如きがおこがましいとは思いつつ、芸人として、またラジオでの喋り手として純粋に聴かせて貰おう、とか考える暇もなくただただ今年も感心と賞賛と笑いに包まれた審査会でございました!
また昨年とは違い、今年は自分の作品もエントリーさせて貰っていて、他の審査委員の方々の顔色伺いつつ、結果なんの賞も取れなかったので(笑)、受賞されている皆様は心より尊敬致します!
今年もやはり『面白いが強い』を実感致しました。笑いだったり、作り方、人間力、色んな『面白さ』が全面に溢れる作品はやはり人の心を動かすものだなあと!意欲が湧き上がって仕方のない審査会でした!

中川 英明

他の広告と比べて出稿量も少なく、ウェブの受け皿もあまりないラジオCMは、ある意味で「世間で話題になった」という評価の物差しが成立しづらい分野と言えるかもしれません。絶対的正義のない広告。だからこそ審査は難しく、また面白くもありました。今年も、純粋なアイデアと完成度のみを競い合う、とてもまっすぐな戦いが繰り広げられたと思います。審査の2日間、緊張も興奮もしまくりで、終わるころには熱が出そうでしたが、どの一瞬を取っても得がたい経験になりました。去年につづきこのような貴重な場を与えていただき、誠にありがとうございました。ラジオはやっぱり最高です。

中山 佐知子

毎年のように言っておりますが、今年も楽しい審査会でした。澤本審査委員長のおかげです。本当にありがとうございます。
審査をしておりますと、他の審査委員のかたが注目するポイント、評価するポイントと自分との違いがたいへん面白く感じられることがあります。「おおっ、この人はここを見るのかっ」と驚いて、相手の顔をまじまじと見直すことが何度もあるのですが、それがまたとても楽しかったです。このように審査会の生物多様性を実現してくださった審査委員長に再び感謝申し上げます。
いまリストを見ましても、生物多様性の環境で選ばれた入賞作品は多彩で面白いです。きっといい年鑑ができると信じております。

西田 善太

2016年一番のニュースは、民放ラジオが聴けるスマホアプリ「radiko.jp」にタイムフリー機能が加わったこと。過去1週間以内のラジオ番組が、条件付きだけど、音楽もCMもそのまんま聴ける。これはポッドキャストより画期的です。アップルペイと同じくらいすごい!と僕は小躍り。皆さんが作っているラジオCMの舞台がやっと整いました、しかもかなりベストなカタチで。いろんな隙間にラジオが入り込めるんですから、クライアントを引っ張り込んで、ラジオCM制作のメリットをことさら強調しましょう。声と音と間だけで作られる数十秒が、人を思ってもみなかった場所に連れてける、ということを、もう1度、世の中に知らしめちゃいましょう。

橋本 奈々未

普段はなかなかお会いできないような、日本の"面白い"を作っている皆さんと審査という1つの仕事を通してお話をすることができて、皆さんの自分が感じたこと思ったことを外から見ても正確な物差しで精査した上で人に伝わりやすく発信できる力に感動し、羨ましく思いました。23歳の若造の私にも分かりやすく面白かったです!同時に自分の無知加減もハッキリし、好きなことを底まで楽しむには好きじゃないことも知っておかなければならないなと思いました。審査委員の皆さんがアットホームに迎え入れてくださったおかげで私も変に構えず自分の意見を言うことができ、かつそれを受け入れてもらえてすごく嬉しかったです!楽しかったです。ありがとうございました!

福本 ゆみ

面白いCMは、なんとなく噂が聞こえて来るもので「金鳥少年」は審査の前から、自分で探しに行って知っていた。コピーも演出もキャスティングも、とても完成度の高い作品。なんだか懐かしい感じがするのに、古くはないのは、全部が絶妙なんだと思う。10年ぐらい前は、とにかく関西パワーがすごく、困ったと思いながらも、楽しみにしている部分もあった。今年は、キリンビールの作品なども面白く、関西パワー復活を感じた。他に、やっぱり歌ものは強いと思わせてくれた「みお綜合法律事務所」、等身大の楽しさがある「マイベストジョブ」などが、とても印象に残った。

三井 明子

光栄にも今年も審査に参加させていただきました。毎年のことになりますが、澤本審査委員長のご尽力とご配慮でほんとうに楽しい2日間でした。
うれしかったのは「アンダー29」に魅力的なCMがたくさんあったこと。派手ではないメディアですが、若い制作者のかたがたが参加し、活躍していただいていることに安心しました。と同時に、若いパワーに負けないように、中堅以上は安心していられないな、とも感じました。今年のグランプリの直川さんやゴールド常連の森田さん、廣瀬泰三さんなどには、ぜひ名作を生み続けていただきたいです!ベテラン、中堅、若手と幅広い層がおなじステージで競い合えるラジオCMは、これからもっと面白くなりそうです。

宮野 潤一

ラジオ局に勤務する者として、ラジオCMを審査させてもらうことは大変オコガマシイ…そう思って臨んだ審査会。でしたが、どっぷり楽しませてもらいました(笑)。澤本委員長をはじめ、ラジオ愛に溢れる方々がACC会議室に集い、耳を傾け、論じ合う、そして笑う!20秒や60秒といった短尺の音像空間に心奪われました。ラジオは「ながらメディア」とよく言われますが、リスナーは本当に無防備なんです。「今の何だったんだ?」というCMが勝つ。あとラジオ的技法かもしれないですが、「間」があると強いですね。番組も、CMも。耳がグッと立ちます。優秀なラジオCMは、やっぱりその「間」がお見事でした。

マーケティング・エフェクティブネス部門審査委員長

土橋 代幸
Q1 審査会の様子
今年の審査委員は、一番効いたマーケティングの選考には、マーケティングの戦略性の評価が不可欠であり、新たにマーケッターを2名迎えた。また、普段の生活感覚も極めて重要であり、男女比率には拘り女性を2名増員。マーケッター2名、クリエイター4名、企業の広告責任者5名の計11名。うち、女性6名、男性5名で行った。審査会は、いつもながら極めて自由で活発。多角的な意見に耳を傾け、審査を重ねるうちに意見が収斂されていく形となった。
Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について
テレビとラジオCMに加えWeb動画も対象にしたことで、小規模の応募も増加し、地方からも2作品が入賞した。マーケティング戦略もメディアニュートラルとなっており、異種格闘技的な状況。その中で、グランプリに輝いたアキタの「きよらのたまご」。コモディティ化した商品の代表格で、他社との差別化も困難。マーケティング対象としては最難関であるが、時流を捉えた戦略と表現で売り上げを伸ばし、定番商品のマーケ担当者に元気と希望をもたらした。
Q3 若いクリエイターに一言
メディアの多様化で戦略も表現も一気に自由度が増している。また、お客様の購買行動も激変し、我々旧世代が構築してきたマーケティングはゼロベースに戻った。今こそ既成概念に囚われない若手クリエイターによる新しい勝ちパターンの構築を期待したい。

マーケティング・エフェクティブネス部門審査委員

幼方 聡子

今年も難しくも楽しかった審査会が終わりました。今年の作品の特徴は、なんと言ってもアイデアの斬新性。様々なジャンルに渡る広告主の、正に効くクリエイティブの数々には大いに学ぶべきものがありました。また、今年のキャンペーンにはSNSとの連動も数多く見受けられ、メディアが複合化かつ多様化している今の時代が感じられました。そんな中、グランプリを受賞した「きよらのたまご」は、卵というコモディティ化した商品を指名買い商品にするという大変な課題を解決した素晴らしいキャンペーンで、早くからSNSや料理アプリなどでも話題になっていた、とても印象深いものでした。受賞した皆様、改めておめでとうございます。

小和田 みどり

昨年に引き続き今年も審査委員に加えていただいたが、数多くのすばらしい作品と成果を見比べ悩みに悩んだ。ターゲティングが効いているのか一度も接触したことのないクリエィティブや、画期的なメディアの使い方もたくさんあり、そのつど驚いたり感動したり。コミュニケーションはデジタルの進化により、日々凄い勢いで変化している。また情報過多により毎日すさまじい量の情報が捨てられている。こんな状況の中きちんと成果を出した「効いた」広告を選ぶのである。改めて皆さんの工夫に脱帽しながらも、やはり最後は人のココロを動かした作品は強いなあと実感した。広告の力は凄い!この部門がさらに活性化することを期待します!

矢野 絹子

今回も「エフェクティブネスとは何か?」を問い続ける審査でした。今年は地方自治体や社会福祉法人からの応募も増え、売上やシェアでは測れない効果を見極めるという難しさが加わりました。様々な視点から熱い議論を重ねる中で、この賞の本質は「マーケティング戦略を立て、クリエイティブを駆使して、課題を解決すること」であり、業種・業態に違いはあれ、突き詰めると「知恵を振り絞り、人の心を動かせたか」なのだと実感しました。その点で入賞作品は、一消費者として「素敵!欲しい!」と思い、宣伝部員として「やられた!」と思った作品です。広告の進化に合わせて賞自体も進化していく、これがME部門の醍醐味だと思いました。

山口 有希子

多くの素晴らしい作品の中で、「マーケティング・エフェクティブネス部門」に相応しいものを選ぶことは本当に難しい。作品によって、影響力の規模や予算規模もアプローチの仕方も全く違う中、キラリと光るアイデアとクリエイティブで、新たなムーブメントを起こす本当に「効く」キャンペーンとは何なのか。ざっくばらんに意見交換ができる審査委員の方々との刺激的な、そして時には厳しい審査の中で、納得がいく作品の選出になったと思います。「効くキャンペーン」を選ぶME賞はマーケティングのコアだと思います。受賞された皆様、本当におめでとうございます!

大越 いづみ

生活者が動かない。若い世代との接点が持てない。長期低落傾向から脱却できない。コモディティ化してしまった。硬直した現状をなんとか打破しようと貪欲にチャレンジした仕事が並びました。審査初参加ですが、想像以上に難航しました。ME部門ならではの作品を選ぶという審査委員の思いは一致していましたが、リザルトの捉え方で票は大きく割れました。審査会で印象に残ったのは、「もし、この作品がなかったらどうなっていただろう。この作品が直面する危機を救ったのではないか」という意見でした。究極の「成果」ですね。参りました。そう考えると、日本中にスゴい仕事はもっとあるはずです。来年はME部門のエントリー数倍増を「目標」にしませんか。

大高 香世

広告は見られなくて当然、そんな前提が作り手の中に潜んでいるからでしょうか。審査が進むにつれ、生活者の「コミットメント引き出し力」が自分の中の投票基準となっていきました。
●見たくなる:auの一寸法師を探してみたくなる仕掛け
●言いたくなる:プリウスの思わず誰かに伝えたくなる仕掛け
●参加したくなる:きよらの寝冷えネコを作りたくなる仕掛け
そんなみんなの“思わずしたくなる”気持ちを綿密に企むことがエフェクティブネスにつながるのだと実感。一方的に口説いても中々通用しない時代なのですね。これからのマーケターは寄り添い共に歩むタイプの恋愛上手でないといけないのか~、ウフフ♪と、感慨深い審査会でした!

木下 一郎

昨年よりも応募いただいた作品数が圧倒的に増えたのも、戦略とクリエーティブと成果3つの要素の重要度が大変高いということだと思います。
今回ME部門で重要なポイントにしている成果に関しても、単なる売り上げ増だけでなく、ブランド好意度、メディア換算度、規模は小さくても知名度UP、CM好感度、など幅広く成果について議論出来たことも今後のME賞のフィールド拡大に繋がるものでした。受賞作の中でも、マス×デジタルでの一寸法師の仕掛けによって圧倒的なメディア露出を獲得したau三太郎シリーズ、そして戦略×クリエイティブ×かわいらしさで世の中の人と審査委員の心を鷲掴みにして成果に繋げた「きよらのたまご」は特に素晴らしかったと思います。

清水 健

エントリーシート。とにかくこれを見まくる、読みまくる。課題があって、どう解決して、結果はどうであったか。新商品をどう売るか、定番商品をどう動かすか。若者離れ、テレビを観ない、この村はどうなるの、メディアはどうする、それがこの一枚のシートに見事にまとめられている。応募が増えても、このシートを見るのはまったく苦にならない。卵のお布団も、一寸法師も、素晴らしい。朝食に温という字を一文字つけたら売り場ができるという発見。いいアイデアだらけだ。このシート、一冊の本にしたら最高のマーケティング本になると睨んでいる。

能登 健裕

賞は結果です。ですが、プランニングの最初から「狙おう」と言えるのが、マーケティング・エフェクティブネス部門の価値ではないか。審査をしながら、あらためて、そう思いました。課題に対しワークする、優れたクリエイティビティ。応募条件がゆるやかに広がったことで、さらに、その価値もリアルに大きくなっています。応募されたクリエイティブ・ソリューションは、宝の山。どれも、挑戦的で実験的、示唆に富んでいました。最も支持を集めた「きよらのたまご」は、ターゲットの生活動線上にすでにある幾つもの小さなブームを巧みに利用し、自走させた戦略が見事でした。はじめて卵という商品に対し好意を醸成したキャンペーンだと思います。

藤井 久

ACC賞ME部門の審査は、「見事な戦略とクリエイティブによって達成された成果を競う」ことになっています。つまり、成果を出していることが、応募の条件であるからして、表現が新しかろうが、強かろうが、売れてなかったらダメ、なわけです。エントリーされてきた広告たちは、高いハードルを越えてきた、結果を出してきた、言わば、「できるコ」たちなんです。みーんな「できるコ」たちなので、審査が、すこぶる楽しい。どこがよいのか、効いたのか、いいとこ探し。常にプラス議論。アラ探しなんてしない。で、最後は単純に、投票で決める。今年も気持ち良く、満場の拍手で、グランプリが決まりました。

インタラクティブ部門審査委員長

須田 和博
Q1 審査会の様子について。審査方針を含め、お聞かせください。
審査方針は「今までの広告の形をしていない新しいモノを探したい」ということでした。「ソレって広告なの?」と訊きたくなるけど、それでいて「コレも広告だね!」と言いたくなる、新しい何か。 それを探すべく、多様な審査委員の皆さまに集まってもらいました。今年度から新設された「カテゴリー」の定義をめぐって、長時間の議論もありましたが、根っから「傾聴を生きる」頼りない審査委員長と、特濃キャラの審査委員の皆さまとのセッションで、面白い作品群・事例群を選ぶことができたと思います。
Q2 今年の作品の傾向および、グランプリ作品について。
宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」は、満票でグランプリでした。フィルムとしても上質でしたし、仕掛けとしても知恵があり、ローカル to グローバルという意味でもWEB的だったと思います。また今年のゴールドの「GIGA Selfie」、「P&G車用ファブリーズ」タクシー企画、そしてTOYOTA i-ROAD「OPEN ROAD PROJECT」という3作に見られた傾向は、どれも戦術においては広告らしからぬ新しいヤリクチとカタチですが、戦略においてはハッキリと明瞭に、販促やブランドに貢献するものだということです。
Q3 若いクリエイターに一言。
21世紀になって、はや15年。いよいよハッキリと、20世紀は過去となりつつあります。変化はあちこちで実体として姿をあらわし、崩壊していくモノと、永遠に変わらない芯とが、明瞭に分別され始めました。四半世紀先に業界に来た中堅と、いまはまだ若い皆さんとが一緒に作っていく「新しい広告業界」は、20世紀のソレとは「まったく別のモノ」になるはず。とっても楽しみです。

インタラクティブ部門審査員

大八木 翼

私は、この部門が「広告」の意味や定義を志高く拡張するものであればいいなと思っています。あぁ!やられたっ。とか、悔しいーー、とか、これヤバすぎ、とか。そうゆう自分のナマの感情が湧き上がる作品に投票したいな、と思い審査に参加しました。審査を終えて思うのは、きちんと動くもの、を審査したかったな、ということ。届く先の相手が見えないインタラクティブは悲しいです。賞が獲りたいだけのビデオを見続けて、広告業界の労働力の不毛さを憂いました。ちゃんとテックのわかる審査委員もいるわけだしきちんと実際のウェブやスマホで動く作品を審査したいな、と思います。また、審査でも議論になりましたが、もはやメディアの成熟度から言っても、オンラインビデオはもはやインタラクティブ部門で審査すべきものではないのかな、とも思っています。

落合 陽一

広告の様式というフレームを一回外してみてから,応募作品を俯瞰して考えると時代の概観が見えてくるという面白い審査経験でした.古典的なインタラクティブバナーから,VR,IoT,舞台演出から食事に至るまで様々な箇所に散りばめられた潜在的なコミュニケーション性は,まさにコンピュータの世紀=魔法の世紀だな,と思いました.解像度の問題や,時間と空間に至る身体性の問題など,普遍的な課題を現在使用可能な技術によって実現した「刹那の美しさ」そしてやがて陳腐になっていくであろう時限付きの表現が様々なところで垣間見え,この時代に生きていること,審査に携われたことが幸せだなと感じました.

倉又 俊夫

受賞者の皆様、おめでとうございます。今回、初めて広告の審査をさせていただきました。公共放送NHKには広告はありませんが、私たちが毎日、広告に囲まれていることも事実。応募作品を拝見して見えてきたのは、「長く愛されてきたブランドが最近調子が悪く、なんとか若年層にリーチしたい、として考え抜かれたスマホ施策の数々」という姿です。しかし、これって、「NHK」や「テレビ」が抱えている課題そのものだと思いませんか? 企業であれ、公共放送であれ、メッセージを届けたい対象は大きくは違いません。須田審査委員長が標榜した『「ソレって広告なの?」を探す』は、つまりは、どうやってメッセージを届かせるか、という自分たちのヒントを探す旅だったのかもしれません。ありがとうございました!

齋藤 精一

広告業界にインタラクティブができて、大きな変革が起きた過去数年。そのインタラクティブのあり方も大きく変わり続けていることを審査を通して非常に感じました。「ソレって広告なの?」という目線で見るとインタラクティブの中にはプロダクトやサービス、それに付帯する広告や仕組みまでもインタラクティブの領域に2016年時点入っています。広告が広告であることで効果が低くなることも考える時代、だからこそ技術の進歩と同じ歩調で、もしくはそれよりも速く広告も含めた様々な表現が進化するのをこれからも現場で見たいと強く感じると共に、自分も領域をどんどん飛び越えて「これも広告!」といえるような施策を作り続けたいと考えさせられたACC2016でした。

Saqoosha

今年はじめて ACC CM FESTIVAL の審査委員をやらせていただきましたが、インタラクティブ部門のグランプリが「ンダモシタン小林」になったことは、Flash 全盛時代に広告コンテンツを作っていた自分からすると、時代が変わった感を強く感じます。応募された作品の並びを見てももはや「インタラクティブ」という言葉で表すことが難しいものや、CM っていうかプロダクトやん?コンテンツやん?というものも多く、名称やこの賞そのものの意義を見直す必要があるのではないかなーと思いました。

白井 明子

受賞者の皆様、おめでとうございます。須田委員長が「これって広告なの?」というものを表彰したいとおっしゃっていましたが、まさに「これ広告なんだろうか」というものが多数受賞されていたと思いますし、審査会でも「これ何の広告?」という言葉が飛び交っていたのが記憶に残っています。次年度さらに「これって広告なの?」という面白いものが日本初で出てくることを期待しますし、精進していこうと考える機会になりました。

白土 謙二

インタラクティブ部門の審査は、14のカテゴリーに分けて行われたが、冒頭から個性豊かな審査委員たちが、その分け方や応募作品との整合性、カテゴリーごとのレベルの違い等々、この審査会をどうすれば、フェアで意味のあるものにできるか、真剣に話し合った。合意できたのは、意見や価値観の違いはあるにしても、せっかく多様な視点を持つ審査委員が、このリアルな場に集まったのだから、できるだけ率直に、自分が評価する作品とその理由を述べ合って、その対話の中から、より優れたものを選んで行こうという前向きな審査の進め方だった。それによって、緊張感のある審査会となり、結果的に、多様な作品への授賞につなげることができたと思う。

菅野 薫

設立当初は「その他部門」を自称することを宣言したように、ACCのインタラクティブ部門は日本の広告においてTVCMとラジオCM以外を評価することを背負おうとしているのでその責務は大きい。更に今年は「ソレって広告なの?」発見したい、と審査基準を宣言したのでより一層。その割には応募において審査においてもインタラクティブ部門という名前が邪魔している部分が大きいと感じる。どんどん進化を続ける日本の広告業界のクリエイティビティが産み出すあらゆる素晴らしい広告的取り組みが様々な角度から褒められることを可能にするために、更に進化をしていって欲しいと思っています。

田中 耕一郎

【それを経由すると、ブランドの価値が鮮やかに変容する】という基準を真ん中に置いた。「ンダモシタン小林」は、地方自治体PRの型(懐かしく美しい日本の世界観)を踏まえつつ、それを鮮やかに破った。見事な仕事だと思う。また、個人的には、超歌舞伎「今昔饗宴千本桜」が、強く印象に残った。【それを経由すると、ブランドの価値を超えて、カルチャーの価値が鮮やかに変容する】という意味において。「それ」には、ニコニコ超会議 byドワンゴが入り、「カルチャー」には、昨年は大相撲、今年は歌舞伎が入る。「古典芸能の持つ価値を、新しいオーディエンスに開き、鮮やかに変容する」画期的な取り組みだと思う。長く続けてほしい。

刀田 聡子

昨年に引き続き、審査に参加させていただきました。「なんでもアリの、その他全部部門」「ソレって広告なの?」の看板の元に集まってきた多種多様な作品群。そして審査委員の顔ぶれも、ACCの部門の中ではおそらくもっとも多彩だったのではないでしょうか。その中で、最初こそ「どうまとまっていくのかな…?」と模索する時間(ドキドキする時間?)もありましたが、終盤に向けて審査は一気に加速し、盛り上がっていきました。カテゴリー賞が設定されたことで、「どの視点でこの応募作を切り取るべきか」と複数の角度から検証することになり、それがより議論を深めたように思います。

朴 正義

インタラクティブ部門は明確な枠がないことに意味がある部門と化しているので、毎回、審査の難しさと面白さを感じています。個人的にも、時代的にも、ユーザーひとりひとりの能動的なアクションに反応するインタラクション作品ではなく、確かな技術と野心的な仮説を背景に、世に飛び交う現象をデータとして受け付けて、それを体験価値向上になめらかにつなげていく作品を楽しみにしていたのですが、とくに去年からの伸び代は少なかったように感じました。ただ、世の中の動きは感じるので、インタラクティブ部門という区分を発展的に見直す時期なのかもしれないですね。

横澤 大輔

メディアがデバイスの多様化や趣向の多様化によってマスメディアの一方通行型からSNSを中心としたパーソナルメディアの双方向参加型に変わってきた今、広告手法も変わってきたことをこの審査会を通じてさらに感じました。ネットとリアル、バーチャルとリアル、良い点を融合したハイブリッドな広告手法とユーザーが「ジブンゴト」として捉えられるコンテンツをどう生み出していけるかが今後とても重要であると感じました。