2021 61st ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS Design Category

総務大臣賞/ACCグランプリ

作品名
With My Eyes
審査評

活発な議論を重ねながら、賞候補を入れ変えていったのだが、
With My Eyesに関しては、一次審査の時から頭一つ抜けていて、
そのままグランプリに決定した。
昨年度のグランプリの分身ロボットOriHimeもそうであったが、
“インクルーシブな社会を実現するために、テクノロジーに何ができるか?”という問いが、
今日のデザインの重要テーマなのだとあらためて思った。
常に見えたいわけではないというロービジョンの方々の思いに寄り添い、
カメラというプロダクトに至ったところに、強く心を動かされた。
このプロジェクトが、社会から注目を集めることによって、
さらに大きな活動になっていくことを期待したい。
(永井 一史)

人間は誰でも自発的行動し、発見をし物事を考えて体感する権利があるべきです。特に「障害」というものは自律的な行動の自由を奪うこともあります。しかしその「障害」という観点こそが実はクリエイティブな発想をもたらす最高の着眼点です。With My Eyes はその特殊な着眼点を持つ人々と共に歩み、新たな技術を通して、見えなかった世界を見えやすくし、ユーザーに新たな発見と挑戦、行動に踏み込めるチャンスや兆しの可能性を提示しています。ここで止まらず、福祉、医療、アート、エンターテイメントなどより多くの分野で普及し活用できると感じます。誰もが世界の豊かさをより感じられるために。
(ライラ カセム)

ACCゴールド

作品名
THE FIRST TAKE
審査評

音楽を生み出し、歌うことで伝える人がいる。そして音楽に心震え、全身で感じとる人がいる。この構図は、言語を超えて共通であり、古から普遍的な行為でもある。しかし、長年のビジネス慣習がときにそれを妨げてしまうこともある。THE FIRST TAKEは、そこを問い直し、改めて音楽の力を思い出させてくれた。シンプルだけど、グローバルに通用する洗練されたUI。「一回きり」という緊張感が与える嘘のなさと信頼感。ソーシャルが強くなった今だからこそ可能なビジネスの形を体現している。「音楽」という原始的で未来にもつながる領域において、新しい一歩を見せてもらった気がする。
(林 千晶)

ACCゴールド

作品名
WELCOME WASH
審査評

新型コロナウィルスの蔓延と世界的な水不足への危機感。こうした社会課題を、わずか20Lの水を浄水して循環し、オフグリッドの手洗い場をどこにでも実現する手法で美しく解決している。日本発の技術とデザインが人類の問題に挑む姿勢に心を打たれた。WOTA社のWOSHは、これからのデザインの方向を示す一つの燈台となるだろう。今回応募された街頭広告キャンペーンではプロジェクトの良さを十分には引き出しきれていなかった。だがWOSHプロジェクトの将来価値を高く評価し、この栄誉を審査委員一同から贈りたい。
(太刀川 英輔)

ACCゴールド

作品名
都電の腰掛
審査評

手すりと基礎が一体化した構成のこのベンチは軽快な外観がとても印象的だ。座面には木に加工を施した角材が使われており、一本ずつ交換できるように設計され経年劣化に対応するように考えられているところも、新規に作られた物でありながら周りの環境に馴染んでいて地域の誰もが使いやすい。多様なコミュニケーションを生み出し、豊かな時間を創出する優れたプロダクトであることなど、公共のデザインとしてお手本となる事例であり、街の道具として秀逸なデザインである。
(柴田 文江)

ACCシルバー

作品名
POCKET SOAP
審査評

一粒30秒という<時間のデザイン>、
ウィルスを敵として石鹸を武器として捉えた<目的のデザイン>、
どこでも石鹸で手が洗える<風景のデザイン>、
そんな3つのデザイン軸がこのプロジェクトには、内在している。
だからこその説得力、可能性、何より共感あるプロジェクトなのだろう。
世界観も「子供に向けて」という安直なものでなく、
「30秒で手が洗える」という簡単さをデザインしているように感じられたのが
個人的にとても好きなポイント。このニューノーマルが世界に広がるのを期待しています。
そして、この商品は子供に手を洗ってもらうための親にとっての「武器」であるに違いない。笑
(小杉 幸一)

ACCシルバー

作品名
THE CAMPUS
審査評

THE CAMPUSは、コワーキング施設としてより多くの人々を魅了しただけでなく、敷地をパブリックに対して完全開放したことで、近隣全体の表情をダイナミックに変えることに成功しました。以前は何でもなかった空間が、今ではオープンでフレンドリーなポケットパークとなって人々を迎え入れ、こだわりを感じる豊かな植物や、バランス良く配置されたベンチと階段がリラックスした雰囲気を作り出しています。そこで働く人だけでなく誰もが気軽に交流でき、新鮮な空気や鳥のさえずりに寛ぎながら、木の葉を通して輝く太陽の下で昼食を楽しむこともでき、活気に溢れた街の目的地となっているのではないでしょうか。このような場所がもっと街にあったらと願うばかりです。
(アストリッド クライン)

ACCシルバー

作品名
ノッカル あさひまち
審査評

1万人規模の小規模市町村は、地域内での移動手段の選択肢が少ないことに、いつも頭を悩ませている。ノッカル あさひまちは、その悩みを行政と企業が手を取り、誰もが移動しやすい地域交通を整備し、その最適化を目指したプロジェクトだ。生活者目線を大切にして開発されたサービスは、顔が見える関係と、優しさを基盤とした小さな経済圏を生み出すものになっている。今後、このプロジェクトが近しい規模の自治体が導入しやすいベーシックサービスになる可能性に評価が集まった。町民のみなさんと事業者がこれからも深く関わり、より良いものになることを期待したい。
(原田 祐馬)

ACCシルバー

作品名
広告 Vol.415 特集:流通
審査評

受賞対象となった雑誌「広告」本号は、私たちの日々の生活を支える「流通」という産業を通して、社会に潜む様々な課題をあぶり出し問題定義を行う。という批評性に富んだ内容です。特筆すべきは、この本を取り扱う全国の各本屋までの製造→流通経路が記された段ボール製の装丁(250種類存在する)やGPSを応用したWEBサイトを通し、今号に与えられた「流通」というテーマを端的に表現し、多くの人の関心を惹きつけることに成功した点です。斜陽といわれる雑誌に与えられた形態特性を掘り下げ、メディアやデザインの持つ可能性に踏み込んだ点、それらを完結にまとめ上げたパッケージング力を高く評価しました。
(ムラカミ カイエ)

ACCブロンズ

作品名
Yamauchi No.10 Family Office
審査評

ウェブデザインとして非常に秀逸で、そのシンプルなコンセプトと、高度なクラフトを評価しました。任天堂に由来するゲーム的世界観を、ピクセルとボクセルを使うことで懐かしくも新しいデザインに落とし込みつつ、ファミリーのレガシーと未来を上手につないだ表現になっているのが素晴らしいと感じました。ウェブサイトという今となっては一般化したメディアでもまだまだ新鮮な表現ができるんだという、Flash全盛だったころのウェブに感じたようなワクワクを思い出させてもらいました。受賞おめでとうございます!
(川村 真司)

ACCブロンズ

作品名
Pale Blue Letter
審査評

シンプルなアイデアの中で様々な要素が絡み合って成り立つ、時代感ある手法が審査委員の関心を集めた。日常の行為となったスマートフォン等でのフィルターによる画像加工が、突如として新鮮味を帯びた瞬間に、多くの人が驚きと共にアーティストとのエンゲージメントを感じたに違いない。アーティストとファンという関係に焦点を絞ったデザインであり、ターゲットは限定的であるにもかかわらず、SNSによりその枠を超えて大きな広がりをみせたことは、デジタルマーケティングの成功例としても素晴らしい。実験的で遊び心に溢れたアイデアにより人々を動かした、ソーシャルメディアを活かした先進的なデザインを評価した。
(高橋 理子)

ACCブロンズ

作品名
BREAST CANCER CHECK!
審査評

乳がんの「セルフチェック」という意図が、ロゴデザインからアクションまで一貫しており、完成度のあるプロジェクトだと思いました。
メディアが主導してこういう活動を牽引してくれること自体もありがたく、且つそこに適切でクリアなブランディングが施されており、若い女性も参加しやすく認識を改める機会になり、とても有効だと思いました。
イチ女性として、実際にしこりを触れてみれるアイテムなどもあり、発見へのリアリティもありました。より普及し継続されるプロジェクトになることを祈っています。
(上西 祐理)